オルタナティブストーリーにみられる躁的防衛@ナラティブセラピー

ナラティブセラピーにおいて書き換えられた物語(オルタナティブストーリー)が高揚感と幸福感に満たされた内容となるとき、その是非は別として、そこには躁的防衛が働いている可能性があります。

躁的防衛に過ぎなかったオルタナティブストーリー:

私は夢分析のトレーニングを受けていたときに初めてナラティブセラピーという心理療法に出会いました。
その後、自由連想による自己分析を行っていた際、その頃に作ったナラティブ(物語)*を見返す機会があったのですが、改めてナラティブを読み返してみると、驚いたことに書き換えられた物語(オルタナティブストーリー)には明らかに躁的防衛の跡が見られました。
*関連ブログ:
ナラティブセラピー☆ボクのアニマはマッチョ、マッチョ
いじめ@ナラティブセラピー
マッシュルーム君の摂食障害@ナラティブセラピー

躁的防衛とは:

躁的防衛とは心理的な危機に対処するための心の働き(防衛機制)の一つで、物事の中の自分にとって都合の良い面だけに目を向け、都合の悪い面はすべて無視(否認)することによって、あたかもそれを限りなく価値があるものと思い込む無意識の心の作用をさします。
ことわざの「隣の芝生は青く見える」の心理にもこの躁的防衛が働いていると考えられます。

躁的防衛の高揚感:

当時作ったナラティブのオルタナティブストーリーには、自分の苦手なことで超人的な力を発揮して危機を脱し、その結果これ以上にない幸福を勝ち取る様が描かれていました。
そのナラティブセラピーのトレーニングはオルタナティブストーリーを作った時点で終了となったため、私の目にはナラティブセラピーが「辛い心理的状況をオルタナティブストーリーから得られる高揚感や幸福感によって一瞬にして消し去ってしまう魔法のようなセラピー」に見えました。
しかし現実には「(努力もなしに)苦手なことに超人的な力を発揮して危機を脱する」ことなどほとんど不可能ですから、このオルタナティブストーリーは実際に直面している悩みの解消には直接役に立ちませんし、得られた高揚感や幸福感も幻想による一時的な満足感に過ぎませんでした。

防衛機制を映し出すオルタナティブストーリー

ナラティブセラピーにおけるオルタナティブストーリーとは(私が勘違いしていたように)物語を書き換えることで直接癒しをもたらすものではなく、書き換えの作業をとおして今まで意識されることのなかった心理的危機への対処方法(防衛機制)を明らかにするものであるように思えます。
ところで、このように多用されると現実逃避に結びつきかねない躁的防衛も、自殺衝動が抑えられないなどの危機的状況に陥ってしまった場合には、逆に大変な力を発揮することがあります。
関連ブログ:躁的防衛の夢による自殺回避の一例
ナラティブセラピー解説本リスト

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