「意識高い系」彼氏のお説教やダメ出しが延々と続く理由~自己愛講座16

最初に今回の話は「意識高い系」の男性の話を扱っていますが、もちろん(ケースとしては少ないですが)女性の方の場合もあります。
ですので適宜、性別を読み替えてご覧いただけますでしょうか。

※男性にこうした方が多いのは、未だに「男性の方が本質的に優れている」旨の男尊女卑的な価値観が根強く残っているため、同じ態度をとっても男性の方が許容されやすいからではないかと思われます。

ふと聞こえてきた「意識高い系」彼氏の台詞

写真の展示を終えてカフェでお茶していると、盗み聞きは良くないことと知りつつ、次のような気になる会話が聞こえてきました。

「君にも僕と同じように、もう少し志の高いに人間になってもらいたいんだ。」

いわゆる「意識高い系」の彼氏の典型的な台詞ですが、恐らく本音は次のようなものだと思います。

君のような次元の低い人間が彼女だと人から思われると、恥ずかして外も歩けない。
早く僕に相応しい人間になって欲しい。
お願いだからこれ以上、僕に恥をかかせてないでおくれ。

恐らく彼が自覚しているのは、彼女から恥ずかしい目に遭わされているという被害者意識でしょうが、それなら彼女と別れて、もっと自分に相応しい女性と付き合うことを考えても良さそうですが、こうした方は決してそうはせず、そのため別れを切り出すのは十中八九、彼女の方からです。
その理由は一見、嫌々付き合っている、より正確な心理では「付き合ってあげている」ように見えて、実はそのような彼女を必要としているためと考えられます。

補足)彼女のことを「恥ずかしい」と感じるのは、専門的には自己対象と呼ばれる、物理的には他人であっても、心理的には自分の一部と感じていることを念頭に置いています。

「意識高い系」の信念の背後には「理想化-価値下げ」の防衛機制の働きがある

恐らくここでは以前に「「理想化-価値下げ」の防衛機制が自己愛的な症状を生み出す~自己愛講座8」で取り上げた、自己愛性パーソナリティの方にもっとも顕著に見られる「理想化-価値下げ」の防衛機制が働いているものと思われます。

「理想化-価値下げ」の防衛機制の働きは、他人を価値下げ(=軽蔑)することで相対的に自分の価値の高まったかのように感じ、それによって自尊心が回復するというものです。
これは裏を返せば、そうしないと自尊心が損なわれて「自分には何の取り柄もない」「生きている価値さえない」というような考えに陥り、精神的に辛くなってしまうということです。

この「理想化-価値下げ」の防衛機制の働きが、冒頭のような彼女を見下す発言の数々を生み出していると考えられます。

自尊心が非常に低いため、それを回復させるために、お説教やダメ出しが延々と続く

次にタイトルにありますように、こうした「意識高い系」彼氏のお説教やダメ出しは延々と、時には何時間も続くことが少なくありません。
その理由は繰り返しになりますが、そうして彼女を見下し続けることが彼の自尊心の維持に役立っているためです。

もちろん誰でも一時的に、他人を蔑むことで自尊心を維持することがあります。
しかし大抵の方は一回で気が済む(自尊心が回復する)ため、そうした行為を繰り返す必要はありません。

しかし今回遭遇した方のように、それが何時間も続く場合は、そうした行為を行っても直ぐには自尊心が回復しないことが窺い知れます。
ですから一見偉そうに振る舞っていても、実は自尊心が非常に低いことが想定されます。

お説教やダメ出しを延々と続ける「意識高い系」彼氏は主体性も乏しい

また、お説教やダメ出しを延々と続ける「意識高い系」彼氏は主体性も乏しいと考えられます。
それは彼女の堪忍袋の緒が切れた時の、彼の反応から推測できます。

誰でもお説教やダメ出しを延々と受け続ければ、我慢の限界が来て堪忍袋の緒が切れてしまいます。
それで、もういい加減にして欲しいと思うのですが、それに対する典型的な反応は「何を言ってるんだ、君が言わせてるんだろ?」というものです。

彼からすれば、言いたくもないことを彼女の態度が言わせているのであり、つまり仕方なくしている、より正確には「させられている」のですから、相手を不快にさせているという認識(罪の意識)もありません。
むしろ不快にさせられているのは自分の方と感じているはずです。

ですから、こうした言動を繰り返す彼からすれば、したくもないことにわざわざ時間を割いてやっている、しかも志の低すぎる彼女のことを不憫に思い、可哀想だからアドバイスしてやっているのだから、むしろ感謝されてしかるべきなのです。

それなのに感謝どころか不満を漏らすのですから、ますます「人間としてなっていない」と感じられ、その蔑みによってますます自分が素晴らしい人間に思えてきて自尊心が高まる。
また、そうした恩知らずな態度をとる彼女に対しても腹を立てることなく、むしろ可愛そうに思い何とかして救ってあげたいとの気持ちが、慈悲の心の証とも写り、その点でも自尊心の高まりが感じられることにもなります。

それはまるで自分が救世主と呼ばれるような価値ある存在となるためにも、彼女にはできるだけ不幸になってもらわねばならないと願っているかのようです。

「意識高い系」の人と付き合うと、どんどん自尊心が奪われていく

以上のように、お説教やダメ出しが延々と続けるようなタイプの「意識高い系」の人と付き合うと、その人の自尊心を「理想化-価値下げ」の防衛機制の働きによって高める役割を担うことになるため常に価値下げられ、言葉を変えれば常にネガティブな評価に晒され、さらにその評価を受け入れるように促されるため、どんどん自尊心が奪われていくのでご注意ください。

こうした方は巧妙にも、その自尊心が低下した状態から救えるのは自分だけだというメッセージも同時に発し、そうして離れられない関係に持ち込んでいきますので。

追伸)続編の記事も併せてご覧ください↓
お説教やダメ出しを延々と続ける人の2つの自己愛タイプ~自己愛講座17

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