二人の「カウンセリングの神様」
カール・ロジャーズはよく「カウンセリングの神様」と称されますが、ミルトン・エリクソンも同様の評価を得ている心理療法家です。
ただし同じ神様でも両者のスタイルはまったく異なります。
ロジャーズがエビデンスを重視し「必要な3条件」などをはじめとしてカウンセラーのあるべき態度の体系化に心血を注いだのに対して、エリクソンは自身のスタイルの体系化を拒みました。
なぜなら彼にとってセラピーとは個別的になものであり、したがって一期一会の出会いであるため、型にはめられたセラピーは有害なものでしかないと考えていたためです。
自身の信念に基づきセラピーを創造したエリクソン
エリクソンに関する本は「後継者による技法の解説書」がほとんどですが、この本は著者のザイク自身が述べているように、技法の背後にある信念についてエリクソンへのインタビューに基づいて書かれた稀な本です。
もとも個別性と言っても、エリクソンはその場の思いつきで行き当たりばったりにセラピーを行っていたのではありません。
むしろ彼自身の強い信念に基づいて非常に戦略的(=恣意的)に、言葉を変えれば明確な意図を持って行われていました。
この本はそんなエリクソンの信念を取り入れ真似るため本ではありません。
なぜなら信念とはその人自身の長年の人生経験によって培われたものであり、そう簡単に変化するものではないためです。
この本は自身の信念あるいは人生観をどのようにセラピーに生かし新しいセラピーを創造するか、そのヒントを探るための本であり、エリクソンもきっと天国でそう望んでいるはずです。
ですからエリクソンが自身の時に辛い体験をどのようにセラピーに生かしていったのか注目してご覧いただくと、そのことに役立つと思います。
もっとも、それでも彼の神業のような技法に心を奪われてしまう可能性大ですが^^;