パーソナリティ障害の診断と治療~現代の精神分析の実践を知りたい方にお勧め

ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』
今回のお勧め本です。

病態水準ごとの診断と治療について書かれた本

タイトルからはパーソナリティ障害の診断と治療に特化した本のような印象を与えると思いますが、実際の内容は神経症水準・パーソナリティ障害(著書では「ボーダーライン」と明記)水準・精神病水準と、すべての病態水準をカバーしており、それぞれの病態水準と各パーソナリティ(性格タイプ)とをマトリクスに対応、つまり診断と治療にあたってはクライエントの病態水準と性格タイプを横断的に理解する必要性が説かれています。

主要な精神分析理論をすべてカバーする内容

さらにこれらはコンテンツの一部に過ぎず、全体を通してフロイトの精神分析理論(欲動論)だけでなく、その流れをくむ自我心理学および対象関係論さらに間主観的アプローチを含む自己心理学という4つの主要な精神分析理論が体系的かつ極めて実践的に学べる内容となっています。
(随所で具体的な介入方法の説明がなされています)

※私見ですが、このように特定の学派にこだらず、すべての学派の理論を有機的に統合する内容となっているのは、マックウィリアムズ氏がニューヨークのNPAP精神分析研究所という統合的な精神分析を教える訓練所を卒業しているためではないかと思われます。

現代の精神分析理論を体系的に学べる良書

また他の心理療法のセミナーなどに出席すると、専門家の間でも未だに「精神分析=フロイトの理論」との印象が強いことを実感しますが、今ではフロイトの理論を忠実に実践する分析家など一人もいないと言われるほど、精神分析界でもフロイトの欲動論はそのままの形ではもはや時代遅れとされています。

ですから『パーソナリティ障害の診断と治療』はフロイト以後の現代の精神分析理論を体系的に学べる良書としてもお勧め致します。

現役のカウンセラーで現代の精神分析の実践を知りたい方にお勧め

ただしこの本は精神分析家になるためのトレーニングを受ける初学者に向けて書かれたものであり、そのトレーニングを受けるためには医師あるいは心理学の修士以上の学歴が必要であること、および内容が極めて実践的なため、分析家のトレーニングを受けている方以外では、現役のカウンセラーで精神分析理論を自身のカウンセリングに役立てたいと考えている方が一番メリットを受けられると思われます。

紹介文献

ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』、創元社、2005年

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