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仮説:ストレスは自覚できなくなることも多く、その無自覚なストレスが様々な形のトラブルを引き起こす

今回の記事は「発達心理学の常識を覆すマザコン男性が好意的に評価される時代に~自己愛講座32」の最後に記述した、非常に仲が良い親子関係であるため一見ストレスの少ない理想的な状態のように思える共生期の関係も、実は良いことばかりではないことについてです。
この共生的な関係の弊害はいくつかありますので、今回は実はストレスがないわけではないことと、その無自覚なストレスが様々な形のトラブルを引き起こすことがある点について触れます。

幸せな人生を送っているはずなのに円形脱毛症に悩まされるドラマの主人公

以前に共生期の親子関係についてNHKのドラマを参考に記事を書いたことがあります。
NHK「お母さん、娘をやめていいですか?」~仲良し親子の関係に潜む共生期の恐ろしさをリアルに描いたドラマ

この記事では触れませんでしたが、ドラマの主人公の娘は毎日幸せな人生を送りながらも、ある悩みを抱えていました。
それは後頭部に円形の禿があることです。

この円形脱毛症と呼ばれる病気の原因は、私の知る限り現在でも詳しいことは分かっていないようです。
そのため、あくまで仮説ですが、何らかのストレスを原因とした病気というのが通説となっています。

精神分析の仮説:人は精神的ストレスから逃れるために防衛機制を発達させる

しかしその仮説からすれば、毎日幸せな人生を送る娘にストレスなどないはずですので、ストレス説は誤りのように思えます。
これが今回の記事のテーマの自覚できないストレスです。

実際、娘はその後の展開で徐々にではありますが、実は母親との関係に対して子供の頃から相当大きな精神的ストレスを感じていたことを自覚し始め、そのことが母親に対する怒りや嫌悪感を感じさせ精神的自律を促して行きます。

補足)このドラマはフィクションではありますが、信田さよ子さんの臨床監修の元、私から見て教科書的と思えるほど実態を反映しています。

人間は日々様々なことにストレスを感じながら生活していますが、フロイトの流れを汲む伝統的な精神分析では、そのストレスに耐えられなくなると、その苦痛を感じなくなるように現実を歪曲して知覚したり、あるいは無意識化して対処しようとすると考えられており、このような心の働きは防衛機制と名付けられています。

例えば私の専門の自己愛的な人が多用する防衛機制を挙げますと「理想化−価値下げ」が生じれば以前に「理想化-価値下げ」の防衛機制が自己愛的な症状を生み出す~自己愛講座8にも書きましたように、自分がこの上なく素晴らしい人間に思えたり、あるいはその対比として他人が愚かな人間に思え優越感を感じたりすることで気分が非常に良くなりますし、「否認」の防衛機制が作動すれば都合の悪いことがすべて「何かの間違い」として無かったことにされることで、躁状態に近いような興奮を味わうことになります。

そして重要なのは、これらの作用がすべて自覚なく生じるため、当人はその効用であるこの上なく楽しい気分だけを味わうことになることです。
これが上述のドラマの主人公が、円形脱毛症というストレス性の身体症状が生じているにも関わらず、そのストレスを一切自覚せず、むしろ毎日この上なく楽しい気分を味わっていることのフロイト的な解釈です。

プロセスワークの仮説:ストレスは様々なチャンネルを移動しつつ、形を変えて表出され続ける

また精神分析とは解釈の仕方は異なりますが、ユング派の流れを汲むプロセスワークという心理療法にも、ストレスが自覚されなくなるだけで無くなるわけではないことを示唆する考え方が存在します。
それはチャンネルという概念です。

プロセスワークではストレスの無意識化に関して、精神分析よりもさらに多様な変化を想定しています。
ですから無意識化されたストレスが身体症状を生み出すだけではなく、原因不明の人間関係その他のトラブルや、紛争など世界規模のトラブルをも引き起こすとまで考えられています。

プロセスワークはかなりスピリチュアルな思想を有する心理療法ですので、最後の世界チャンネルの話にまで及ぶと正直にわかには信じ難い思いに駆られはします。

ストレス発散ばかりが奨励されていることへの危機感

ですが、いずれにしても複数の心理療法において、無意識化された精神的ストレスが様々な弊害をもたらすことが示唆されておりますし、私自身も長いこと原因不明の身体症状に悩まされた過去を持つ身です。

このためマスメディアなどで、ストレスの対処法としてもっぱら上手に発散することばかりが推奨されていることには個人的に危機感を感じています。
なぜならそこで提示されている対処法のほとんどが、何か楽しいことをすることなど気晴らしが目的であるためです。

気晴らし自体は有害なものではありません。しかしそれはストレスから意識を逸らす作用をもたらすため、習慣化するとこれまで述べて来たようなストレスの無意識化をもたらしかねません。

ですから、もしそうした対処法を実践してもストレスが一向に減っているように感じられなかったり、あるいは別のトラブルが生じたりして来た場合には、そのストレスから意識を逸らすこと一辺倒のその方策自体が災いとなってしまっている可能性があることから、その場合には多少辛くてもそのストレスと向き合い、その原因を探求し、それ自体を改善することをお勧め致します。

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