民主政治では有権者に政治の専門知識は必要とされていない
前回、選挙から窺える日本人の主体性の乏しさ~「この人に任せておけば万事上手くやってくれるはず」との期待の存在という記事を書きましたが、この選挙について先週放送されたNHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ~ポリティカル・コレクトネスのジレンマ大研究」の中での、政治学者の吉田徹さんの話がとても印象的でした。
選挙に無関心な人の理由の一つとして「政治は難しくて分からない」との声をよく聞きますが、それに対して吉田さん曰く「教養がない人にも選挙権が認められるのが民主政治」とのこと。
つまり有権者である私たちに政治や社会などについての特別な専門知識は必要とされていないということです。
国や社会全体のことを考えて投票しなければならないという思い込み
私もその一人でしたが、選挙で候補者や政党に投票する際には、政治が関わる国や社会全体のことを考えて投票しなければならないとの思い込みがあるのではないでしょうか。
そしてその思い込みから、専門家ではない自分には難しくて分からないため、たとえ関心があっても投票できないという事態も起こり得るのではないかと考えられます。
しかし吉田さんの話では、そのように難しく考える必要はまったくないとのこと。
ではどのように考えれば良いのでしょうか?
そのヒントが少し前にNHKで放送された特報首都圏「ワタシ、選挙に行きました~”18歳”主権者教育の現場から~」にありました。
主権者教育によって高校生が政治に関心を示すように変化した
この番組は、ある高校の主権者教育の様子を取材したものです。
番組では参加した生徒が最初は政治にまったく無関心で選挙にも行かないと言っていたのが、選挙当日になると過半数の生徒が投票するように変化していました。
また投票の際の判断基準も、前回の記事で触れた学歴や血液型のようなものから政策(公約)へと変化していました。
前回の記事で示唆した「人柄」重視の人が多くを占める日本の実態と大きな違いです。
自分のメリットで候補者を選んだ生徒
中でも印象に残ったのは、ある女子生徒の行動です。
彼女は大学への進学を希望していましたが、学費の問題に直面していました。
そのためもあって彼女は教育に関する政策に関心を示し、最終的に教育格差是正のため高校や大学の学費無料の実現を目指す候補者に投票したのです。
この話を聞いて、まだ世間を知らない高校生だから、そんな風に自分のことしか考えられないのだと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが私は彼女のような選択の仕方でも構わないと思います。
なぜなら彼女のような選択の仕方が、冒頭の吉田さんの言わんとしたことのように思えるためです。
自分にメリットがあると思っている人は投票に非常に積極的
ご存知のように日本には、それぞれの業界と深いつながりを持つ族議員と呼ばれる人たちがいます。
この議員の人たちは政治の世界で多大な影響を力を持ち、かつ業界の利益となるような様々な便宜を図ってくれるため、それを期待して集票マシーンと揶揄されるほど熱心な人々が毎回欠かさずこの人たちに投票するという、お互いにWin-Winの関係が出来上がっています。
このように自分にメリットがあると思っている人は投票に非常に積極的です。
対して無党派層とも呼ばれる人の大半は「自分には関係のないこと」と考えるなど、政治や選挙に対してまるで無関心です。
この差が上述の女子生徒の行動を支持する理由です。
選挙では自分のメリットで候補者や政党を選んでも良いのでは
以上のような理由から、選挙や政治を自分との関わりから判断することは投票への大きなモチベーションとなり、また政治に関心を持つ第一歩となるのではないかと思われます。
実際、番組に登場した生徒は自分との関わりを通じて選挙や政治への関心を高めていったのですから。
最後に自分のメリットだけを考えて投票し出したら世の中がメチャメチャになると心配される方もいらっしゃると思います。
そのような心配も、ごもっともですが、それでも構わないと考えているのが民主政治の思想なのではないかという内容の記事を次回に予定しています。