選択に迷った時の対処@フォーカシング&解決志向ブリーフセラピー

選択に迷っている時に、「試しに一つの選択肢に決めてみる」ことで見えてくるものがあります。

選択に迷うクライエント:

カウンセリングの学習仲間とカウンセリングの練習をしていた時のことです。
クライエント役の学習仲間は、あることで選択に迷っていました。
私も同じように選択に迷ってしまうことがよくあります。どの選択肢をとっても「何らかのデメリット」があるために気持ちがスッキリせず、結局迷い続けることになるのです(T_T)

「試しに決断してみる」アプローチ:

ここで、とっさに思いついた提案をしてみました。「試しに一つの選択肢を選んだと決断してみる」というアプローチです。
あくまで「試し」ですから「実行に移す必要はない」ことを強調しました*。選んだと仮定してみて、その時の「からだの感じ」を感じてもらうわけです。
*普段は「実行に移すこと」を念頭に考えているので、様々な利害関係が絡んで結局行き詰まってしまいがちになります。
一つ目の選択肢の決断からは、クライエントが「前向き」になれるような答えは得られませんでした。そこでもう一つの選択肢(クライエントは「二つの選択肢」の間で迷っていました)でも試してもらいました。
すると、クライエントが悩んでいたこととは「まったく別の課題」が浮かび上がってきたのです!
その課題は「対人関係」に関するもので、クライエントの希望からサイコドラマ(心理劇)へと展開して行きました。
そして、その「別の課題」に取り組むうちに、最終的に「最初の悩み」の答えも得られました。それは、二つの選択肢のどちらかを選ぶというものではなく、「第三の選択肢」と呼べるような新たな選択でした☆

クリアリング・ア・スペース(フォーカシング)との類似点:

あとで振り返ると、「試しに決断してみる」アプローチは、フォーカシングの「クリアリング・ア・スペース」と似ていることに気づきました。
クリアリング・ア・スペースの問いかけに「何も問題はない」「すべて満足している」というものがあります。これは逆説的な問いかけで、このように自分に言ってみることで反対に、問題や不満に思っていることが浮かび上がってきます。
「試しに決断してみる」アプローチでも、無理に決断してみることで「漠然としていた違和感や気がかり(=フェルトセンス)」に、より焦点が当てられ明確になっていったのだと思います。

解決志向ブリーフセラピーとの類似点:

解決志向ブリーフセラピーでは、一般的な問題解決アプローチのような「問題の原因を探る」ことはせず、「問題が解決した状態(=ゴール地点)」を先にイメージして、「そのためには、どうしたらいいのか?」と解決手段を探って行きます。
今回の「試しに決断してみる」アプローチでも、あくまで仮ですが「ゴールの状態」を想像してもらっています。
ただ、解決志向ブリーフセラピーでのゴールが「目標」であるのに対して、「試しに決断してみる」アプローチでの(仮の)ゴールは目標ではなく、無理にゴールをイメージすることで逆に違和感(フェルトセンス)に気づくことが狙いです。

日常生活の選択場面での利用:

「試しに決断してみる」アプローチは、カウンセリングの場に限らず日常生活でも利用できるかもしれません。
選択に迷った際に、試しにどれかの選択肢に決めてみて、その時の「気分」や「からだの感じ」に注意を向けてみます。
「楽になった(スッキリした)感じ」があれば、それが「求めていた答え」でしょうし、そうでなくても出てきた違和感から何か得られるものがあるかもしれません。

ユージン・T.ジェンドリン著『フォーカシング』、福村出版、1982年
フォーカシングの創始者ジェンドリンは、「クリアリング・ア・スペース」をフォーカシングのステップに含めるなどして、とても重視していたようです。

ピーター・ディヤング著、インスー・キム・バーグ著『解決のための面接技法[第4版]―ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き』、金剛出版、2016年
解決志向ブリーフセラピーの第一人者インスー・キム・バーグによる著書。ワークショップでも使われている入門書です。事例も豊富☆

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