解決志向ブリーフセラピーとMRIアプローチを併用するメリット

要約:解決志向ブリーフセラピー(ソリューション・フォーカスト・アプローチ:SFA)とMRIアプローチの両方を、状況に合わせて使いこなして初めて、ブリーフセラピーの原則を効果的に実践することができる。

解決志向ブリーフセラピーだけが知名度が高い

以前に『変化の技法』というブリーフセラピーの本を紹介しましたが、そのブリーフセラピーを効果的に実践するための方法が分かりやすく書かれているウェブページを見つけました。

ブリーフセラピーとは | 日本ブリーフセラピー協会

この日本ブリーフセラピー協会のページにも書かれているように、日本で知名度が高いのは解決志向ブリーフセラピー(ソリューション・フォーカスト・アプローチ:SFA)のみで、『変化の技法』などで解説されているMRIアプローチの方はほとんど知られていません。

このため解決志向ブリーフセラピーだけを実践している方も多いのではないでしょうか。

解決志向ブリーフセラピーの限界

解決志向ブリーフセラピーとは、その名称が示すとおり、問題の原因の究明よりもその解決に力点を置き、そのための技法として「例外の質問」や「ミラクル・クエスチョン」などの質問法を活用します。

「例外の質問」の限界

まず「例外の質問」とは、どんな問題にも、それが生じない例外的な瞬間が必ず存在するとの信念のもと、クライエントにその瞬間を思い出してもらい、その成功事例を今後の生活の中でどんどん実践していってもらうアプローチを指します。

しかしこの「例外の質問」を実際のカウンセリングの場面で試してみると、クライエントが例外を見つけ出せないことがよくあります。
このようにもし本当に例外事項が存在していたとしても、それに気づけなければ、残念ながら活用することはできません。

「ミラクル・クエスチョン」の限界

また「ミラクル・クエスチョン」とは、クライエントに問題が解決した状態を次々と想像してもらうことで希望が芽生え、問題解決のモチベーションが高まることを意図したアプローチです。

しかしこちらも以前に「カウンセリングの難事例の特徴その2〜空想と現実を少しも混同できない(催眠効果を期待できない)」で触れましたように、実際のカウンセリング場面では、最初から拒否されたり、あるいは問題の解決イメージがその場だけのもので終わってしまい、クライエントの日常生活の変化へと繋がらないケースが多々あります。

以上のように問題の例外を見つけ出し、それを拡張していく解決志向ブリーフセラピーの手法だけに頼っていては、クライエントの問題解決を効果的にサポートすることができません。

MRIアプローチとは

そこで登場するのが、ブリーフセラピーのもう一つの技法のMRIアプローチです。

MRIアプローチとは、問題がいつまでも解決しないケースでは、クライエントの解決策が問題の解決に役立っていないどころか、かえって問題を持続させてしまっているとの前提のもと、その解決策をやめさせ、代わりのアプローチをとらせるというものです。

ブリーフセラピーの原則の効果的な実践

冒頭の日本ブリーフセラピー協会のウェブページでは、ブリーフセラピーの二つの技法を車の両輪にたとえ、ブリーフセラピーの有名な原則に対応させています。

具体的には「上手くいっていることは、そのまま続ける」ことを促すのが解決志向ブリーフセラピーであり、「上手くいっていないであれば、何か別のことを試す」ことを促すのがMRIアプローチというものです。

実際のカウンセリング場面では、問題の例外の有無やそれへの気づきだけではなく、それぞれの技法を試みることに対するクライエントのモチベーションの非常に大きな差にも直面することになります。

どれほど効果的に思える技法も、それを実践するのはあくまでクライエントであるため、そのクライエントの協力なしにはカウンセリングは成り立ちません。
ですからクライエントの変化に対するモチベーションを高める意味でも、二つの技法を習得することは非常に有益と考えられます。

参考文献

R・フィッシュ、J・H・ウィークランド、L・シーガル著『変化の技法-MRI短期集中療法』、金剛出版、1986年
森俊夫著、黒沢幸子著『〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決志向ブリーフセラピー』、ほんの森出版、2002年
インスー・キム・バーグ著、ピーター・ザボ著『インスー・キム・バーグのブリーフコーチング入門』、創元社、2007年

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