論旨:学童保育の仕事を通じてその存在を知った「すみっコぐらし」のキャラクター設定について、心理カウンセラーとして個人的に感じた社会的な効用をまとめてみました。
学童保育の仕事で初めて「すみっコぐらし」の存在を知る
すみっコぐらし。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、イラストレーターの横溝友里さんがサンエックス在籍時に生み出したキャラクターです。
私は心理やアート、健康、経済、SDGs以外の世の中のトレンドにはかなり疎いため、すみっコぐらしの存在は2ヶ月前から始めた学童保育の仕事の現場で初めて知りました。
この「すみっコぐらし」、学童保育に通う小学生たちの間でも大人気で、さまざまなキャラクターグッズを集めたり、あるいは各キャラクターのお絵描きをして楽しむ子ども達がたくさんいます。
内気な子ども達の心に共感するキャラクター設定
すみっコぐらしのサブタイトルは「ここがおちつくんです」が、これは大人でも感じる「端っこの席の方がなぜか落ち着く」感覚を表したものです。
また各キャラクターの共通項として、いわゆるネガティブキャラが設定されてもいます。
学童保育の子ども達を見ていると、すみっコぐらしに惹かれる子には、あくまで私見ですが、いわゆる「やんちゃ」なタイプよりも、大人しくて内気な印象を抱くような子が多いようです。
ですから「すみっコぐらし」は、こうした普段あまり目立たないタイプの子どもの心に共感するキャラクター設定が施されているのではないかと考えています。
学童期のアタッチメント欲求も反映されたキャラクター設定
それともう一点「すみっコぐらし」のキャラクター設定から個人的に感じることは、学童期のアタッチメント欲求の反映です。
同じく学童保育の子ども達の様子からは、専門的にはアタッチメント欲求と呼ばれる、さまざまな形での身体接触に対する欲求が感じられます。
詳しくは別の記事に譲りますが、愛着と訳されるアタッチメント欲求の元々の意味合いは、物理的に他人と接触する(くっつく)ことで安心するという動物的な本能に近い欲求です。
(したがって愛用の品に対して用いられる愛着という概念とは大きく異なるものです)
すみっコぐらしの公式サイトのプロフィールページ上部には、すみっコたちが部屋のすみっこにいるだけでなくピッタリとくっついている様子が描かれていますが、学童保育の仕事を経験した私の目にこの光景は、いっけん内気に見えても、実は他者との関わりを希求している子ども達の心理を巧みに表したもののように思えます。
インクルーシブ教育にも通じるキャラクター設定
さらに「すみっコぐらし」の次のようなキャラクター設定は、社会学や(文化)人類学の分野で「周縁の人々」「周辺に追いやられた人々」などと称される、ときに主流派の人々から不当な扱いを受けることもあるマイノリティに属する人々の存在を連想させます。
【とんかつ】
とんかつのはじっこ。 おにく1%、しぼう99%。あぶらっぽいからのこされちゃった…【とかげ】
じつは、きょうりゅうの生き残り。つかまっちゃうのでとかげのふり。みんなにはひみつ。【えびふらいのしっぽ】
かたいから食べ残された。 とんかつとは こころつうじる友。
こうした生き物にも温かい視線を注ぎ、魅力的な存在として描く「すみっコぐらし」は、違いに対してすぐに価値判断を加えて優劣をつけるのではなく、互いの個性として認め合うインクルーシブ教育のマインドを育む一助となるのではないかと期待しています。
KIRINのドリンクのファンゆえ「すみっコぐらし」のシールをたくさん集めることに
最後に余談ですが、私はプラチナ乳酸菌入り飲料のイミューズや午後の紅茶など、KIRINのドリンクを愛飲しているため、今キャンペーンペーン中の「すみっコぐらし」のオリジナルシールを短期間にこんなに集めてしまいました↓
私が持っているよりも学童保育のファンの子ども達にプレゼントした方がきっと喜ぶでしょうが、奪い合いになってしまう可能性もあるため、おそらく運営会社の許可が下りないでしょう…誠に残念です。
アタッチメント 参考文献
ジョン・ボウルビイ著『母子関係入門』、星和書店、1981年
繁多進著『基礎講義アタッチメント―子どもとかかわるすべての人のために』、岩崎学術出版社、2019年