カウンセリングの難事例の特徴その1〜非常に強いネガティブ思考と諦めの心理の存在

今回の記事は「私説:メディアなどから発信されるコミュニティ作りの成功事例は鵜呑みにすべきではない」の最後で告知した「コミュニケーションに関する成功事例の中で、ほとんど触れられることのない事柄」について書く予定でした。

ですが該当するケースについて考察しているうちに、そのケースに該当する方は上述のコミュニケーションにの成功事例が当てはまらないだけでなく、カウンセリング手法(心理療法)さえものが功を奏さない非常に困難なケースであるとの認識に至りました。
ですから今回の内容は予定を変更して、カウンセリングの難事例*とすることに致しました。

*「難事例」とはカウンセリングが上手く機能しない事例のことを指します。

なお以下の記述においてカウンセラーが経験していることは客観的な事実ではなく、すべて主観的な体験に過ぎません。
したがってクライエント(相談者)が体験していることとの間に、大きな違いが生じている可能性がある点は注意が必要です。

難事例に該当するコミュニケーションの悩みには、コミュニケーションスキルとは別の要因が存在する

私の所に相談にいらっしゃる方のお悩みの多くは人間関係についてのものですが、そのお悩みの中には人間関係そのものが上手く築けないというケースがあります。
つまりどの集団にも属することができないか、あるいはそれはできていてもコミュニケーションが上手く図れないため、非常に強い孤独感を感じてしまうようなケースです。

こうしたケースの方のネックになっているのは、人との出会いや関わるきっかけがないことではありません。
それらはある程度存在しているにも関わらず、それでもコミュニケーションが上手く図れないことが悩みとなっています。

コミュニケーションが上手く図れない悩みは一見コミュニケーションスキルの問題のように思えますが、今回の難事例に該当するような方の問題はそれとは別に存在しています。
なぜなら相談にいらっしゃった方の多くは、すでにコミュニケーションスキルを高めるために本を読んだりセミナーに出席したりといった努力をされているためです。

難事例では非常に強いネガティブ思考が存在

では難事例に該当するコミュニケーションの悩みには、コミュニケーションスキル以外にどのような問題が存在しているのでしょうか。 私の印象では、難事例に該当する方には次のような共通点が見られました。

・「何をやってもどうせ上手くいかないに決まっている」というような、非常に強いネガティブ思考
・そこから生じる諦めの境地

クライエントの矛盾するような態度にカウンセラーは混乱

さらに上述のクライエント(相談者)の信念はカウンセリングの場でも表出されます。
そのためカウンセラーは他人とコミュニケーションを図るためのアドバイスを求められ、その求めに応じ様々な提案をするたびに「それは多分効果がない」と即座に却下されるような経験をします。

これはカウンセラーからすれば、クライエントの態度は明らかに矛盾しているように思えるため、クライエントが何を求めているのか分からなくなり混乱していきます。

こうしてカウンセラーは混乱するとともに、自分の手持ちの技法がどんどん底をついていくのを感じて焦り、そして徐々に追い込まれていきます。

カウンセラーはクライエントの評価に晒されているのを感じ、冷静さを失っていく

それだけではありません。次々と提案や介入が却下され続けることで、自分が評価、それもひと際厳しい評価に晒されているような感覚に陥り萎縮していきます。
普段カウンセラーはアセスメント(分析に基づく評価)する立場にあり、その立場に慣れてしまっているため、立場の逆転に慣れていないのです。
(またこの時には、クライエントから氷のような冷たさを感じることも少なくありません)

こうなってしまっては普段のような冷静さは望むべくもなく、その結果普段の半分も実力を出せなくなってしまいます。
こうして万策尽きて、自分にはこれ以上のサポートは無理であることを認めざるをえなくなり、お詫びとともに終了(中断)するというのが典型的なパターンです。

次回は表面的にはクライエントが最初から諦めてしまっているように思えても、しかしもし本当に諦めているのであればカウンセリングを受けるはずがないため、何とかクライエントの変化のモチベーションを高めようとする努力するカウンセラーの試みの紹介と、しかしそれも残念ながら難事例では功を奏さないことについて述べる予定です。

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