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要約:実家に帰省した時の親族との関わりを事例に、カール・ロジャーズが生み出したクライエント中心療法の「内的準拠枠」について、同じくセラピーの場で傾聴を用いたコフートの自己心理学と比較しつつ考察。

昨日、自己分析のブログに「苦手なはずの子供の辛さを感じ取ったことで急に身近に感じられ、関わりが持てるように変化」と題する記事を掲載しました。
この時の体験から幾つかの洞察を得ましたので、何回かに分けて記事にして行きます。

今回はクライエント中心療法の内的準拠枠という概念を取り上げます。

同じ行為に対する両極端な受け止め方(解釈)

冒頭で紹介した自己分析のブログに書かれている子供とのやり取りの後、弟家族が出かけている時に、母とその子のことについて話す機会がありました。
母から度々その子の困った様子について聞かされていたためです。

この時もどう思うかと聞かれたので、印象がずいぶん変わったことと、その理由としてブログに書かれている、大人の会話の蚊帳の外に置かれ寂しい思いをし、その状態から逃れるために、話に加わろうと必死に話しかけていたことを伝えました。

ところが母から返って来た反応は「本当に困った子だよね」というものでした。
この時の母の心境は恐らく察しがつくと思いますが、このように同じ行為を目にしても、一方は「とても可哀想」と感じているのに対して、もう一方は恐らく大人が大事な話をしているのにも関わらず、自分に関心を引くために無理やり話に割り込もうとしている「何てワガママな子供だ」と言うような両極端な受け止め方(解釈)が生じています。

恐らくこうした受け止め方の相違は日常生活で頻繁に生じており、その積み重ねが人間関係の悪化の大きな要因となっているのではないかと考えられます。
なぜならその認識対象が特定の個人である場合、その受け止め方がその人の印象を決定づけると考えられるためです。

クライエント中心療法の内的準拠枠

このような受け止め方の違いを理解するために役立つ概念の一つが、心理職の方なら一度は教わったことのある、クライエント中心療法の内的準拠枠という概念です。
(internal frame of referenceの訳語で、単に準拠枠と言われることもあります)

クライエント中心療法とは、カウンセリングの神様とも称されるカール・ロジャーズが打ち出した心理療法で、その特徴は今回の記事に関連した部分で言えば、相談者の思考の枠組みをできるだけ正確に理解する点にあります。

内的準拠枠とはその枠組みを指す用語ですが、このようにあたかも相談者と同じように物事を考えることがロジャーズ派のカウンセラーには強く求められる訳ですが、この態度はより一般的な言い回しでは相手の立場に立って考えることが近いと考えられます。

内的準拠枠の概念は簡単に活用できるものではない

事例に話を戻すと、この時の私は運よく内的準拠枠の概念を活用できたのに対して、母は恐らくそうではなかったため、共感的批判的というような両極端な差が生まれたのでしょう。

なおここで「運よく」と表現しているのは、別に謙遜で言っている訳ではありません。
内的準拠枠は、様々な要因から実際には簡単に活用できるものではないことを実感しているため、このように感じたまでです。

次のページからは、その内的準拠枠の活用を阻害する種々の要因について検討して行きます。

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