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心理カウンセラーの自己開示はどの心理療法においても一般的には様々理由からタブー視されることが多いのが実情ですが、精神分析家のレニックやフォーカシングのジェンドリンはそれとはまったく異なる考えを示しています。

心理カウンセラーの自己開示に積極的だったジェンドリン:

(心理カウンセラー自身の治療関係への関与を認めることや自己開示することで)心理カウンセラー自身の余裕は少なくなるが、クライエントにはより多くの余裕が生まれる。
(セラピストと患者のための実践的精神分析入門 P.64 一部改変)
この文章は心理カウンセラーとクライエントとの関係性(対人関係で生じる互いの影響)を重んじるオーウェン・レニックという精神分析家が、心理カウンセラーの自己開示の有効性について述べたものですが、この一文はフォーカシングの創始者ジェンドリンの治療態度を思い起こさせます。
『フォーカシング指向心理療法』によればジェンドリンは、クライエントが話に詰まったりフォーカシングで疲れてしまったときには遠慮なく援助の手を差し伸べ、お茶を飲みながらたとえばジェンドリン自身の旅行へ行ったときの話をし(自己開示)、その間はクライエントに休んでもらっていたそうです。
(私にはとても真似のできない芸当です^^;)

心理療法や治療態度に柔軟な姿勢を示したジェンドリン:

晩年のジェンドリンは心理療法に対してとても柔軟な考えを持っていたようで、フォーカシング以外の心理療法も積極的に治療に活用していました(その治療成果は『フォーカシング指向心理療法』の下巻に収められています)。
またジェンドリンの心理療法に対する柔軟性を示す別のエピソードとして、弟子に対して自ら開発したフォーカシングに固執(万能的な心理療法として理想化)することに警鐘を鳴らしたことが挙げられます。
ジェンドリンのこのような心理療法に対する柔軟な姿勢は、上述のように心理療法のみならず治療態度においても徹底していたようです。

オーウェン・レニック著『セラピストと患者のための実践的精神分析入門』、金剛出版、2007年
今日的な要請であるセラピーの短期化を目的とした精神分析の本です。
もっともセラピーの短期化といっても、ブリーフセラピー(短期療法)のように治療手順をシステム化する心理療法とは異なり、上述の「心理カウンセラーの自己開示」などのように治療態度を工夫することによりセラピーの短期化を試みています。
またこの本の直接の目的は時代の要請に適合しなくなった伝統的な精神分析の修正にありますが、そこで取り上げられているものは治療手順よりも治療態度の方が大部分を占め、また精神分析の専門用語もほとんど使われていないため、他の心理療法を用いる心理カウンセラーの方にも役立つ内容となっています☆

ユージン・T.ジェンドリン著『フォーカシング指向心理療法(上・下巻)』、金剛出版
上巻は傾聴・フォーカシングによる洞察を促す心理カウンセリングの仕方、下巻は認知行動療法・ゲシュタルト療法などの心理療法をフォーカシングによって統合する試み(ジェンドリンはそれをフォーカシング指向心理療法と呼んでいます)が述べられています。

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