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要約:巷のカウンセリング・サービスのほとんどが複数回のセッションを前提としており、場合によっては数10回に及ぶケースも少なくない状況について、その要因を当カウンセリングルーム「心理カウンセリングの部屋」の特徴と比較しつつ考察。

今回は「カウンセリングの回数・期間について」の最後で触れた、巷のカウンセリング・サービスのほとんどが複数回のセッションを前提としており、場合によっては数10回に及ぶケースも少なくない状況について、その要因を考察します。

検索上位に「相談内容の早期解決」を目指すカウンセリング・サービスは見当たらず

一般的なカウンセリングが長期化しがちな要因は複数考えられますが、その1つはそもそもカウンセリングをできるだけ短期間に終わらせることに関心があるカウンセラーがあまりいないと考えられることです。

この仮説を確かめるためにGoogleで「カウンセリング」と検索しましたが、カウンセリング・サービス以外のページが過半数を占めてしまったためキーワードを「カウンセリング オンライン」に変更して再検索すると、1ページ目に広告を含めて9件のカウンセリング・サービスが表示されました。

そしてその中でセッションの継続を前提としている記述が見当たらないサービスが2箇所、1回のみの予約は可能でも、あくまでカウンセリングがどのようなものなのかを体験する「お試し」扱いとなっているサービスが2箇所、残りの5箇所はお勧めも含めて継続が通常のプランとなっていました(2021年9月4日時点)。

またセッションの継続を前提とした記述が見当たらないサービスについても、認知療法などのエビデンス(科学的根拠)に基づいた技法を取り入れていることは示されていましたが、短期療法とも訳されるブリーフセラピーなどを取り入れ、クライエントの相談内容の早期解決を目指すような記述は見当たりませんでした。

これらのカウンセリングのサービスに対して、私のカウンセリングルームの「心理カウンセリングの部屋」では、ネットの検索結果で表示される説明文に現在次のような文章を載せています。

東京の中野坂上にあるカウンセリングルーム。短期間に効果の望める様々な心理療法を用いて、お客様のご相談内容の迅速な解決を15分につき1,500円の低料金でサポート。 専門は自己愛障害と呼ばれる自尊心に関わる悩み。オンライン・電話・メールカウンセリングにも対応。

注)引っ越しに伴い、カウンセリングルームでのカウンセリングは現在中止しております。

多くのカウンセリング・サービスでは「相談内容の早期解決」をニーズとは認識していない

前述のように「心理カウンセリングの部屋」では相談内容の迅速な解決をアピールポイントにしているのに対して、他の検索上位にランクされるカウンセリング・サービスの多くでは、最初から複数回のセッションが想定されています。

この両者の違いは、私はクライエント(カウンセリングの相談者)には悩みをできるだけ早く解決して楽になりたいというニーズがあると考えているのに対して、他のカウンセリング・サービスではクライエントにはもっと別の重要なニーズがあると認識しているためではないかと考えられます。

話を「ありのままに」受け止め続けるため、セッションは必然的に長期化する

その別のニーズとは、複数のサービスに共通してみられる文言から察しますに、次のようなものと推測されます。

安全な環境の中で、否定も評価もされることなく「ありのままの」自分を受け止めてもらいたい。

そして多くのサービスでは、カウンセラーがこのニーズに真摯に応え続け、かつあるサービスで比喩として用いられていた鏡のような存在となりクライエントの話を伝え返し続けることで、クライエントは他者からありのままの自分が真に理解され受容されたと感じて本来の自分を取り戻し、その結果もともと備わっている対応能力が働き出すことで、直面する問題に対する洞察を得て自ずと回復していくことが想定されていました。

このように他のカウンセリング・サービスで採用されているアプローチでは、相談内容を含めクライエントという一人の人間の存在を、評価を加えることなくありのままに受け止め続けることが主眼になるため、セッションはどうしても時間を要するものとなります。
なかには月2回のセッションを平均1年程度続けることを想定しているところもありました。

以上のように「心理カウンセリングの部屋」と他のカウンセリング・サービスのセッション回数の違いを生み出している要因の1つは、想定しているクライエントのニーズの違いであると考えられます。

相談内容の早期解決を目指すMRIアプローチ

記事の補足として、相談内容の早期解決に役立つ書籍を1冊ご紹介いたします。
R. フィシュ、L. シーガル、J.H. ウィークランド著『変化の技法―MRI短期集中療法』、金剛出版、1986年

こちらは米国カルフォルニア州のパロアルト市にあるMental Research Institute(通称MRI)で開発されたMRIアプローチと呼ばれる技法の解説書です。
精神分析などの知見を有効活用する私のアプローチとは大きく異なりますが、できるだけ短期間にクライエントの相談内容の解決を目指すという点は共通しています。

以前の紹介記事はこちらです↓
『変化の技法-MRI短期集中療法』~ビリーフセラピーの基本理念が学べる最重要図書

次のページでは、クライエントの存在をありのままに受け止め続けるアプローチが時間を要する理由を、さらに詳しく考察いたします。

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