リン・ホフマン著『家族療法の基礎理論』- 読者の批判的検討を可能とする良書

要約:リン・ホフマン著『家族療法の基礎理論』は、著名な家族療法家と親交の深かった彼女ならではの視点から、主要な家族療法の解説のみならず、実験的試みや仮説に繋がる理論家の信念やその当時考えていたことなども記述されており、読者の批判的検討を可能とする良書。

著名な家族療法家や研究者の心のうちが詳しく書かれた本

今回紹介するのは家族療法の古典的名著とされる、リン・ホフマン著『家族療法の基礎理論―創始者と主要なアプローチ』です。

同書の特徴は、著者のホフマン自身がアッカーマン家族療法研究所などで研究や臨床を重ねた著名な家族療法家の一人であり、また交流関係も非常に幅広いものであったのか、主要な家族療法の解説のみならず、実験や仮説に繋がる信念やその当時考えていたことなども記述されている点です。

こうした記述が可能であったのも、ホフマンが日頃から家族療法の研究・実践家と交流を深めディスカッションなどを通じて考えを共有して来たからではないかと考えられます。

同書の記述内容からは、身近な人間の視点ならではの臨場感が感じられます。

読者の批判的検討を可能とする内容に満ちた良書

『家族療法の基礎理論』には前述のような特徴があるため、主体性*が高い読者であれば、家族療法の各理論を鵜呑みにすることなく、その都度批判的検討を加えながら読み進めることを可能としています。

*関連ページ:主体性が高い人と乏しい人との主な違い

またホフマンは20年ほど後に『家族療法学―その実践と形成史のリーディング・テキスト』を記しています。
同書も『家族療法の基礎理論』と同じく家族療法の流れを振り返るものであり、後から出版されたものとあってナラティブ・セラピーに関する考察もなされています。
その意味で『家族療法学』の方が包括的な内容であり、教科書としては優れているのかもしれません。

しかしそれでも敢えて以前に出版された『家族療法の基礎理論』を勧める理由は、臨場感が感じられるその記述スタイルが各理論をその理論家の精神内界と結びつけながら理解することを可能とし、そのことが前述のように読者の批判的検討を可能とすると考えられるためです。

紹介文献

リン・ホフマン著『家族療法の基礎理論―創始者と主要なアプローチ』、朝日出版社、2006年

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