若者は重症化しづらいとの情報が、新型コロナウイルスの感染を拡大させている可能性

要約:新型コロナウイルスには、健康的な若者ほど重症化リスクが低く無症状の割合も高いとの情報が広まっている。
この情報が感染第1波の時は、知らないうちに他人を感染させてしまうリスクと認識されたが、それ以降は「自分が感染しても心配ない病気」へと変化し、この心理が爆発的な感染拡大を引き起こしている可能性がある。

前回あくまで私見ですが、日本人の羞恥心が強く他人から悪く思われたくないとの気持ちが強い傾向が、感染経路の追跡調査に少なからず影響を与えている可能性を取り上げました。
新型コロナウイルスの感染経路で会食が少ないのには、日本人の非難されることへの弱さが関係

今回も日本人の心理が新型コロナウイルスの感染状況に影響を与えていると考えられる別の側面について記事にします。

目次:
感染しても無症状の人が多いという特徴が、感染第1波の時のステイホームを促した
同じ特徴から「自分は感染しても心配ない病気」へと認識が変化
「高齢者ほど重症化リスクが高い」という情報が、皮肉にも若者による感染拡大を引き起こした

感染しても無症状の人が多いという特徴が、感染第1波の時のステイホームを促した

新型コロナウイルスについては、高齢者や持病がある人ほど重症化リスクが高いとの情報が広まっていますが、これは裏を返せば持病のない若者は感染しても重症化するリスクが低いということになります。
またそれに加えて新型コロナウイルスには、感染しても無症状の人が少なくないとの情報も伝わっています。

これらのウイルスの特徴が、2020年の春の感染拡大の第1波の時には知らないうちに他人を感染させてしまうリスクと認識され、ステイホームという合言葉の元に大多数の人が不便を感じながらも自粛要請に応じ、この態度が世界から賞賛されました。

同じ特徴から「自分は感染しても心配ない病気」へと認識が変化

ところがその後の感染拡大第2波、そして現在の第3波ではステイホームというフレーズはほとんど聞かれなくなり、街の人出も新宿や渋谷ではウイルス発生前の85%程度にまで戻ってしまっているそうです。
これは人々の新型コロナウイルスについての認識が、第1波の時とは大きく変化した証と考えられます。

あくまで私見ですが、この変化は主に新型コロナウイルスの「若者は重症化リスクが低い」「ほとんどの人が感染しても無症状」といった特徴に対する意味づけの変化によってもたらされたのではないかと推測されます。

具体的にはこのウイルスの「感染しても無症状のことが多い」という特徴に対して、第1波では他人に対する無自覚な感染という意味づけがなされたのに対して、第2波以降ではベクトルを自分に向け変えて「自分は感染しても心配ない病気」と考えるように徐々に変化していったのではないかと考えられます。

なお後者の楽観的な認識には、自分では十分気をつけているつもりでも、第1波の時と比べてみると行動に差が生じているというように、無意識的な心理であることも起こりえます。

「高齢者ほど重症化リスクが高い」という情報が、皮肉にも若者による感染拡大を引き起こした

なお前回の記事でも参照したNHKのニュースサイトによれば、日本は少子化の進行で若年層ほど人口が少ないにもかかわらず、もっとも多い新規感染者の年齢層は20代と30代になっています。

このことから日本では20代と30代の若者を中心に感染が広がっていると言えそうですが、この年齢的な傾向には「高齢者ほど重症化リスクが高い」という情報の裏返しとしての「若者ほど重症化リスクが低い」との認識が少なからず影響しているのではないかと考えられます。

次のページでは、感染拡大の第2波以降の認識の変化を生み出したと考えられる心理について考察を進める予定です。

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