人格は遺伝か環境か?
人格の形成要因は「遺伝的要因(気質)」によるものなのか、それとも「環境的要因(主に養育方法)」によるものなのかは古くから議論されてきましたが、それぞれの主張には具体的な根拠があります。
遺伝的要因:
「双子と養子」および「一卵性双生児と二卵性双生児」との比較研究から、知能・体型・性格・特定の精神疾患の発症率などに遺伝的影響がみられることが判っています。
環境的要因:
一方、人格障害の方々の生育歴の調査から、人格と養育の仕方(=環境的要因)との間にも相関関係があることが明らかとなっています。
たとえば、精神病質性(反社会性)人格の方々には幼少時に「物質的には甘やかされ、情緒的には無視される」ような環境で育ったケースが多く、自己愛性人格の方々には「両親の欲求充足の道具」として育てられたケースが多い、ことなどが知られています。
現在の人格形成理論:
したがって現在では、人格形成に対する「遺伝的要因」「環境的要因」それぞれの影響を認め、「両者の要因が複雑に影響し合って人格が形成される」とする考え方(相互作用説)が主流となっているようです。
また、ここでの「相互作用」には、乳児の気質がもたらす養育者(母親役)への影響も加味されています。
余談ですが、特定の精神疾患には性差もあることが知られています。たとえば「女性の『うつ病』『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』の発症率は男性の2倍」、逆に「男性の『統合失調症』の発症率は女性の3倍」といった統計があります(シンプル生理学)。
この性差には、体の構造・機能の違い以外にも、ジェンダー(性役割)の影響も無視できませんので、性差に関しても「遺伝的要因」「環境的要因」の双方が影響していると考えられます。
※人格障害の定義についてもご一読ください。
ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』、創元社、2005年
初心のセラピスト向けに書かれた現在の精神分析理論による人格構造についての本です。人格障害に限らず人格構造全体について考察されているため、治療の見立てにも大変役に立ちます。
また、精神分析の本に特有の難解な用語はありませんので比較的楽に読めます☆