R.D.レイン著『ひき裂かれた自己』~分裂病・分裂病質(スキゾイド・シゾイドパーソナリティ)だけでなく自己愛の理解にも有益

分裂病質(スキゾイド・シゾイドパーソナリティ)の現象学的理解の古典的名著

R.D.レインの「ひき裂かれた自己」、今ちょうど読んでいる本です。
内容の大半は分裂病よりも分裂病質*についての記述で、この分裂病質の現象学的理解(症状の具体的な記述)の古典的名著と言われています。

*分裂病質は、今はスキゾイドパーソナリティあるいはシゾイドパーソナリティの名称の方が一般的です。

分裂病質(スキゾイド・シゾイドパーソナリティ)と自己愛性パーソナリティの共通点・相違点の理解に有益

この『ひき裂かれた自己』、読んでいて最初のうちは戸惑いました。
なぜなら例えば「空想へのひきこもり」など、分裂病質(スキゾイドパーソナリティあるいはシゾイドパーソナリティ)というよりも、むしろ私の専門の自己愛性パーソナリティについての記述を読んでいるかのように錯覚したためです。

しかし読み進めているうちに、そうした共通点を持ちながらも決定的に違う点もあることが分かりました。
私が感じた一番の違いは自己愛講座でも幾度となく書きました自己対象欲求が、レインの「ひき裂かれた自己」を読む限り分裂病質(スキゾイド・シゾイド)の方にはほとんど見られない点です。

強い自己対象欲求の表れは、自己心理学の創始者ハインツ・コフートが自己愛障害の鑑別に用いた指標であり、事実上自己愛性パーソナリティを決定づけるものですので、それがほとんど見られないということは、多くの共通点を持ちながらも分裂病質(スキゾイドパーソナリティあるいはシゾイドパーソナリティ)と自己愛性パーソナリティとはやはり異なる性格構造であることが、本書を読んでいて理解できました。

ですからR.D.レインの『ひき裂かれた自己』は分裂病質(スキゾイド・シゾイドパーソナリティ)*の理解だけでなく、自己愛性パーソナリティのより深い理解にも役立つ本と思われます。

*このパーソナリティの解説本自体も非常に限られています。

紹介文献

R.D.レイン著『ひき裂かれた自己-分裂病と分裂病質の実存的研究』、筑摩書房; 改訳版、2017年

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