『夢学』の悪夢退治法のPTSD治療への適用の可能性

  • 2016年6月10日
  • 2021年11月25日
  • 不安障害
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今回の記事は元々は夢分析のサイトに掲載したものですが、内容が臨床心理に関するものですので、カウンセリングのサイトにも転載致します。

※この記事は、実際にPTSDの症状に苦しむお客様に試してみて効果が得られたことを報告するものではなく、理論的に効果が期待できることを示唆するに過ぎない、それゆえ私説であることをお断りさせていただきます。

PTSDをテーマとしたドラマから『夢学』の悪夢退治法を連想する

以前にNHKで『海底の君へ』というドラマを見ました。藤原竜也さん演じる主人公が中学でのいじめを契機にPTSDを発症し、未だにフラッシュバックなどの症状に苦しめられ、その症状のために仕事も長続きせず転落の人生を送り、やがて殺人未遂事件を起こすという物語です。

このドラマの主人公の様子を見ていて、以前に書いた『夢学』の悪夢を退治する方法という記事のことを思い出しました。
何者かに怖い目に遭わされる夢を繰り返し見る場合に「今度は反対にやっつけてやる」と誓い、夢の中でそれを実行するという、いわば精神力によって悪夢に対処する方法です。

トラウマ体験を想起させる治療法の失敗などを契機に、対症療法的なアプローチが主流となって行ったPTSD治療

私の知る限りPTSDの治療は、従来は主にトラウマ(心的外傷)を生じさせた辛い体験を想起させるというものでした。
これは1960年代までの欧米では精神分析、それもフロイトの打ち立てた古典的な理論の多くを引き継いだ自我心理学が非常に大きな力を持っていたため、その古典的な精神分析理論における神経症治療の技法である「無意識の内容の意識化」がそのまま用いられていたのではないかと思われます。

ところがこのPTSDに対する自我心理学的なアプローチの治療成績が、約7割の人が治療前より症状が悪化という散々な結果となったため、その反動として無理にトラウマ体験を想起させることを止め、それに代えてフラッシュバックが起きた時など非常に強いストレスがかかった際の対処法を教えることに重点を置くように変化して来ているようです。

ただこのような対症療法的なアプローチのみではPTSDの治療が長期化してしまうという問題が生じてもいます。

「今度フラッシュバックがやってきたら、やっつけてやる」と誓う

そこで『夢学』の悪夢退治法の登場です。
この技法自体は悪夢の撃退を直接の目的としています。ですが心の中で生じ、それゆえその苦痛から逃れることができないという点では悪夢もPTSDのフラッシュバックも同じでしょうから、同様の効果が期待できそうに思えます。
具体的には「今度フラッシュバックがやってきたら、やっつけてやる」と誓い、実際にそれを実行するというものです。

この他にもPTSDに『夢学』の悪夢退治法が有効と考える理由は「やっつけてやる」との思いが意識の産物であり、その意識は睡眠時よりも覚醒時の方がハッキリしている、つまりより強く誓うことができると考えられるためです。

「やっつけてやる」と誓うこと自体が様々なメリットをもたらす

さらにこの「やっつけてやる」と誓うこと自体に、次のようなメリットをもたらすことが期待できます。

・対処できるかもしれないとの期待(希望)から、不安が軽減し安心感が増す
・自分の能力への自信が芽生える
・これらの要因から自尊心が高まる

以上のような理由からPTSDの治療に『夢学』の悪夢退治法を試してみる価値は十分にあるように思えます。

悪夢を退治する方法 参考文献

パトリシア・L. ガーフィールド著『夢学(ユメオロジー)―創造的な夢の見方と活用法』、白揚社、1993年

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