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『夢学』の悪夢退治法の、パニック発作の治療への適用の可能性

  • 2016年6月10日
  • 2021年11月25日
  • 不安障害
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前回、『夢学』の悪夢退治法のPTSD治療への適用の可能性という記事を書きましたが、ここで推奨されているフラッシュバックに立ち向かう方法は、その他の非常に辛い症状、例えばパニック発作に対しても効果が期待できるように思えます。

なお、パニック発作とは、私も若い頃に受験ノイローゼになったとき一度経験したことがありますが、気質的な異常が認められないにもかかわず、このまま死んでしまうのではないかと不安になるほどの非常に強い発作に襲われる症状です。

パニック発作を強い精神力で克服したユング

一つ実例を紹介致します。『ユング自伝』に次のような記述があります。

私は最もきつい発作を起こした。私はもう少しで椅子から転がり落ちるところだったが、2,3分たつと気分が良くなり勉強を続けた。
「こん畜生!発作なんか起こすもんか。」私は独り言をいって勉強を続けた。
今度は2回目の発作が起こるまでに15分かかった。それも1回目と同じように過ぎた。
(中略)
私は我慢し続け、1時間後に3回目の発作が起こった。それでもなお私は諦めず、もう1時間勉強し、発作の襲来を乗り越えたと感じるまで続けたのである。
ふいに、それまでよりずっと気分が良くなった。事実、発作は二度と起こらなかった。
(中略)
あらゆる策略が終わって、どうにか済んだのである。神経症とは何かを私が教わったのは、その時だった(『ユング自伝1』P.55)。

特に発作を起こすような身体的疾患のことは書かれていませんので、これは恐らくパニック発作と推測されますが、それにしても並々ならぬ精神力の強さです。
(具体的な年齢は不明ですが、小学校高学年の頃のようです)

パニック発作に怯えてばかりいては、予期不安が広がりパニック障害へと至ってしまう

冒頭で述べましたようにパニック発作は死を予期するほどの強い不安を伴いますので、ユングのように発作に立ち向かうのは簡単なことではないでしょう。
しかしパニック発作自体が直接の死因となることはない、つまり発作で死ぬことはないというのが定説のようですし、また定義上はストレスなどの心理的な要因によって生じる発作とされていますので、要因となっているストレス耐性を高めることは非常に効果的と考えられます。

また前回の記事にも書きましたように、いつまた起きるか分からない症状に怯えるだけの状態から、その症状に立ち向かおうと思う状態へと変化するだけでも自尊心にプラスの効果が期待できます。

さらにパニック発作に怯えてばかりいては、予期不安と呼ばれる、常に発作の再発ことを心配し、そのことで発作にかえって敏感になってしまう状態へと陥り、それが恒常化すると、さらに深刻なパニック障害へと至ってしまうことになります。
ですからこの予期不安を減じるためにも、発作に立ち向かおうとする意志は必要ではないかと考えられます。

参考文献

カール・グスタフ・ユング著、アニエラ・ヤッフェ編集『ユング自伝-1―思い出・夢・思想』、みすず書房、1972年
パトリシア・L. ガーフィールド著『夢学(ユメオロジー)―創造的な夢の見方と活用法』、白揚社、1993年

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