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自ら不愉快な状況に身を投じ、それでも被害感情を募らせる~自己愛講座25

今回の自己愛講座で取り上げる自己愛の病理は、タイプは「抑うつ型」、病態水準はかなり重症で精神病水準に近いパーソナリティ障害水準に該当するものです。
また今回の内容は重症ゆえにほとんど無自覚、つまりたとえどんなに意図的に思えたとしても当事者の方にその自覚は皆無に近いことを留意していただけますでしょうか。

毎回不満を募らせながらも、なぜか足しげく来店するお客さん

よく利用するカフェに不思議な行動を取る方がいらっしゃいます。
このカフェは繁華街に位置する人気のカフェチェーン店のため大変混んでおり、満席で座れないことも少なくありません。
そのためその方も同じ憂き目に遭うのですが、その度に不満を顕わにし店員さんが詫びるということが毎回のように繰り返されています。
またその方の態度が非常に威圧的なため、他のお客さんも少なからず不快に感じているようです。

仮にそのカフェのことを気に入っていたとしてもチェーン店なのですから他のもっと空いている店舗を利用すれば良いのにと思いますが、その方はなぜか毎日のようにこの店舗に来店し、そしてお決まりのように腹を立てるのです。

自分は被害者なのに、なぜ譲歩しなければならないのか?

実はこの方と似たようなことを、若い頃の私は頻繁に行っていました。
ですから仮に同じような心理が働いているのだとすれば、この方の行動は次のように解釈することができます。

まず店が混んでいて座れないのは、誰の責任でしょうか?
少なくても自分の責任ではないはずです。
だとすれば自分は被害者です。

次に何かトラブルがある際に、それを解決する責任は被害者と加害者のどちらにあるでしょう。
恐らく加害者の側でしょうし、少なくても被害者ではないでしょう。
だとすれば被害者である自分が、なぜ別の店を利用するという譲歩を強いられなければならないのでしょうか?
何とかしなければならないのは自分に嫌な思いをさせた店側の人間ではないのでしょうか?

補足)ちなみに、この程度のことで「譲歩させられる」と感じるのは「理想化-価値下げ」の防衛機制の働きにより、対人関係の優劣に非常に過敏になり、常に「どちらが上か」ということに心を奪われているためと考えられます。
参考ページ:「理想化-価値下げ」の防衛機制が自己愛的な症状を生み出す~自己愛講座8

あくまで推測ですが、これが毎回不愉快な思いをしながらも、それでもその行動を決して変えようとはしない理由の一つと考えられます。

このように自分が被害者であることにあまりに固執し、他のことが一切ないがしろにされると、そのことが原因でさらなる不利益を被ることになります。
しかもそれに対しても、やはり「自分は被害者なのだから」というスタンスで物事が解釈されますので延々と負のスパイラルが続き、その結果ますます自分が不幸な人間に思えてきます。

この負のスパイラルから抜け出すためには、その不愉快な状態を生み出しているのは自分自身でもあることを自覚し、問題となっている行動を変化させることですが、特に重症域の自己愛障害の人にとって、これは簡単なことではありません。
次回はその理由について書かせていただく予定です。

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