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境界性パーソナリティ障害は重症の自己愛性パーソナリティ障害というのが私の見解

先週のNHKEテレ「ハートネットTV」で境界性パーソナリティ障害が取り上げられていました。
メンタルヘルス入門2 境界性パーソナリティ障害|NHKEテレ「ハートネットTV」

私のカウンセリングルームにも当事者の方や周囲の方からの相談がありますので、この機会に境界性パーソナリティ障害についての記事をいくつか書きたいと思います。
ですがその前に今回は、境界性パーソナリティ障害に対する私の見解を述べたいと思います。

境界性パーソナリティ障害の概念は時代と共に変化してきた

まず境界性パーソナリティ障害の病態は、今日ではDSM-5(アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の分類と診断の手引き」第5版)の診断基準に基づき紹介されることがほとんどですが、この境界性パーソナリティ障害の病態は固定されたものではなく、むしろ時代と共に変化してきました。

初めはパーソナリティ障害一般を表す病態概念だった

まずこの病態の概念が初めて登場したのは20世紀半ばで、妄想などは生じないため今日統合失調症と呼ばれる精神病水準ほど重症ではなく、しかしクライエントとの間に良好な人間関係を築くことが極めて困難なため今日の不安障害のカテゴリに該当する神経症水準よりも明らかに重症と考えられる、つまり両者の中間領域の精神疾患を表すものとして提唱されました。

ですから境界性パーソナリティ障害の境界とは、元々は精神病水準と神経症水準との「境界」を表し、そのため名称も境界例と呼ばれていました。
つまり境界性パーソナリティ障害は、最初は今日のパーソナリティ障害一般を表す病態概念だったのです。

またこの当時はまだ有効な抗精神病薬が開発されていなかったため、精神病とは治療不可能な精神疾患を意味していました。
ですから境界例には、治療の余地がある最も重症域の精神疾患との意味合いもありました。

DSMの改定により、やがてパーソナリティ(性格の1タイプ)を表す概念へと変化

ところが先のDSMが何度か改定されるうちに、やがて境界性パーソナリティ障害という、パーソナリティ障害の1つへと変化していきましたが、これは大転換と言えるほどの大きな変化です。
なぜなら当初は精神病水準と神経症水準との「境界」という病気の重症度を表す概念だったものが、今日ではパーソナリティ(性格の1タイプ)を表す概念へと変化したのですから、評価の座標軸までもが変わってしまったことになるためです。

重症の自己愛性パーソナリティ障害というのが私の見解

簡単に歴史を振り返ったところで、いよいよ本題の私自身の見解に話を移します。

私自身の境界性パーソナリティ障害への見解は上述のどちらにも当てはまらず、両者の折衷的なものとなっています。
具体的にはパーソナリティ(性格タイプ)としては自己愛性パーソナリティ、病態水準としては自己愛性パーソナリティ障害を含むパーソナリティ障害と統合失調症を典型とする精神病水準との境界、つまり自己愛性パーソナリティ障害が重症化して精神病水準に近づいた状態と考えています。

つまり性格タイプとしては自己愛的な特徴を有しながらも、病態水準が非常に重症なため各症状がより激しく、また重症化により心が極度に不安定になったことで、その不安定さに基づく新たな症状も発生するという理解です。

注)ただし統合失調症は、今日では完治は難しいとしても症状の緩和が十分可能な精神疾患と考えられているため、精神病水準といっても昔のような治療不可能な病態を意味しません。

このように考えるのは重症の自己愛障害と考えた方がカウンセリングが上手く行くことが多いからですが、次回は私がこのような見解を採る根拠として、DSM-5の診断基準を元に境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害との類似性を示したいと思います。

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