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自己中心的(自己中心性)のもう1つの意味〜何でも自分の評価に結びつけて解釈:精神病・パーソナリティ障害水準の病理の特徴

今回の記事は「白雪姫のお妃の殺意は自己愛的な羨望の象徴、加えて自己愛の臨床の難しさ〜自己愛講座43」の最後に予告しましたように、カフェで偶然見かけた親子の様子を例に自己愛的な人の特徴の1つである自己中心性について考察します。

自己中心性の一般的な意味〜自分のことしか考えない自分勝手な性格

自己中心性あるいは自己中心的という概念は、一般的には自分のことしか考えない自分勝手な性格を指し、そのような人のことを略してジコチュウ(自己中)などと称します。

私の専門領域である自己愛性パーソナリティおよびその病理的側面で用いられる自己中心性の概念も、こちらの意味で使われており、自己愛性パーソナリティの主要な特徴の1つとされています。

自己中心性のもう1つの意味〜何でも自分の評価に結びつけて解釈する

ところが精神分析では、この自己中心性の概念が、もう1つの意味で使われることがあります。
それが記事のタイトルにもある、何でも自分の評価に結びつけて解釈する傾向です。
まずその事例として、冒頭で述べたカフェの出来事を紹介します。

自己中心性の事例

偶然見かけたその親子(母と娘)の様子は次のようなものでした。

※ただしプライバシーへの配慮のため、典型的な複数の事例を組み合わせて記述しています。

恐らく娘さんは普段からそのカフェを利用し、今回初めて母親を連れて来たようです。
互いに同じドリンクとワッフルのようなスイーツを注文し「これ、とっても美味しいのよ」と母親に話しかけると、それを食べた母親が「これのどこが美味しいの?こんな不味い物。私が作るお菓子の方が数倍美味しいじゃない」と怒りを露わにしました。
その剣幕に押されたのか、娘さんもそれに同意していました。

恐らく娘さんは自分が美味しいと思うものを母親にも食べさせたい、そうすれば喜んでくれるに違いないと思い、今回母親を連れて来たのだと思います。
ところが母親は喜ぶどころか、すっかり気分を害してしまったようです。
では一体何がそこまで母親を怒らせてしまったのでしょう。

自己中心性の病理は、暗に自分のことを言っていると邪推させる

私の推測ではこの時の母親には、(2つ目の意味の)自己中心性の心理が働いていたのではないかと考えられます。
恐らく日頃から何事も自分に、より具体的には自分の評価に結びつけて解釈する癖がついているため、この時も娘さんの発言を自分の評価と受け止めたのではないかと考えられるのです。
すると前述の娘さんの発言は、例えば次のように歪めて解釈されることになります。

このお店のワッフルは、お母さんの作るものよりも、ずっとずっと美味しい。

しかし実際には、娘さんは母親の作るお菓子については何も触れていません。
それにもかかわらず、そう言っているように思えてならない。
つまり暗に自分のことを言っていると邪推させるのが、(2つ目の意味の)自己中心性の病理の特徴です。
さらに母親が激怒したように、その考えを思い過ごしなどではなく事実と確信していることが、この病理の特徴でもあります。

精神病およびパーソナリティ障害水準の「自己中心性」の病理の特徴の違い

したがってこの病理は比較的重症域の人に見られ、典型的には精神病およびパーソナリティ障害水準の病理の特徴とされています。

具体的には、精神病水準では頭の中で思い浮かべたことがそのまま現実にも生じているように感じられる、つまり幻聴などの幻覚が生じる。
対してパーソナリティ障害水準では、事例の母親のように相手の話の裏を読み、それを自分の評価と解釈として歪めて受け止める。さらにその考えを事実と確信しているという違いがあります。

「自己中心性」の病理は心を不安定にさせる

もっとも今回の話を聞いて、後から思い過ごしかもしれないと思い直したとしても、その場では事例の母親のように、暗に自分のことを言われているように感じてしまうことがあるよくある方もいらっしゃるかもしれません。
あるいは今回の事例を聞いて、母親の前で他人を褒めるような行動をとる娘の方がデリカシーがないと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

ですがそうした方は、知らず知らずのうちに何でも自分の評価に結びつけて解釈する癖がついてしまっているかもしれませんでの注意が必要です。

なぜそれが好ましくないかと言えば、何でも自分の評価に結びつけて解釈する癖がついてしまっていると、常に他人からの評価に晒されることになるため、他人の些細な発言にも一喜一憂し心が非常に不安的になってしまうためです。

こうなってしまっては会話を楽しむことなど、とてもできません。
むしろ度々相手の発言からネガティブな評価を感じ取ってしまうため、その相手への敵意が生じて関係を損ない、被害妄想的な考えばかりが膨らんでしまい兼ねません。

それに対して、このような癖がなくなれば、いちいち裏を読む必要がなくなるため、会話自体が楽しいものとなるでしょう。

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