自虐と攻撃性の心理で働く知的な防衛機制-自由連想法による夢分析・治療238回から、分離・知性化・隔離・合理化などの知的な防衛機制に関する次のような洞察を得ました。
自虐の心理の背後で働く知的な防衛機制
友人の発言は一見すると自虐の心理に思えますが、その友人は決して自虐と言えるような性格ではありません。むしろ残虐と思えるほど攻撃的な性格で、人間関係のトラブルの耐えない人間です。
先の友人の発言が自虐の心理に基づいたものではないとすると、考えられる原因は知的な防衛機制による感情の抑圧です。
私は自分が車に跳ねられる痛みや恐怖を感じて「冗談じゃない」と思ったのに対して、友人は痛みや恐怖を抑圧した。それが一見自虐に思える思考に結びついたのだと思います。
自虐と攻撃性の心理・行為の背後で働く知的な防衛機制
この友人の、他人から見て自虐と共に残虐とも思えるほどの攻撃性を備えた性格と、その性格の背後で知的な防衛機制が働いている可能性から次のような洞察を得ました。
自虐と攻撃性とは一見相容れない心理のように思われますが、精神分析の人格理論など(たとえば『パーソナリティ障害の診断と治療』)が示しますように、自虐と攻撃性とは表裏一体の心理であり、どちらか一方が際立っている、あるいは自覚されているかの違いに過ぎないように思えます。
(うつ病の方も攻撃性を示すことがあります)
また自虐・攻撃性どちらの心理にも背後で知的な防衛機制(分離・知性化・隔離・合理化など)が働き感情が抑圧されているために、他人には耐え難い心理にも極めて冷静でいられるのでしょう。
そして知的な防衛機制の働きがさらに強まるとそれが行為にまで及び、自虐行為(自傷行為を含む)や残虐行為などを「恐怖や罪悪感を一切感じることなく」行うことが可能となるのかもしれません。
自殺や犯罪行為につながる知的な防衛機制
一般的に知的な防衛機制は心理的に健康な方に多用され、万能感・投影・同一視・否認など重症の精神障害の方が多用する防衛機制に比べて害が少ないと言われています。
しかし上述の考察が正しければ、比較的健全と思われている知的な防衛機制も程度によっては自殺や犯罪行為に結びつきかねないことになります。
凶悪犯罪を犯す人の多くは反社会性人格障害の可能性が高いそうですが、その中で知能犯と呼ばれる人の中には反社会性人格障害ではなく、ストレスに対してもっぱら知的な防衛機制に頼る人格(強迫性人格)の方のような気がします。
防衛機制 解説本