これまで無意識の心理の表れと信じていた精神分析の自由連想法の連想内容が、実はその多くが心理学の理論を借りた解釈にすぎないことを知るに到りました。
これまでの自由連想法による自己分析からの洞察:
自由連想法による自己分析への心理学理論の影響
これまで私は主に精神分析の創設者フロイトが心の病の治療に用いた自由連想法*と呼ばれる心理療法を使って自己分析を行ってきました。
*自由連想法とは、頭に思い浮かんだことをすべて言語化していくことにより無意識に抑圧されていた心理を意識化することを目的とし、そのことが治療的に作用すると考える心理療法を指します。
しかし過去の自由連想法による自己分析の内容を振り返ると、あることに気づかされました。それは自分がこれまで勉強してきた心理学の理論の、自己分析から得られた洞察への影響です。
(当時はまったく気づきませんでしたが)自由連想法による自己分析の内容を改めて吟味してみますと、自由連想法による自己分析から得られた洞察(自己洞察)の多くに、その当時勉強していた心理学の理論の影響の跡が強く見られます。
たとえばクライン派を含めた対象関係論や自我心理学などの精神分析に傾倒していた頃の自己分析では主に防衛機制による解釈が自己洞察の中で述べられ、次にコフートの自己心理学や間主観性心理学に関心が移ると、今度はもっぱら自己対象欲求や関係性の観点から、さらに社会構成主義の理論に触れると関係性の概念が拡張され社会から受ける影響が自己洞察に表れるといった具合にです。
自由連想法の連想内容自体への心理学理論の影響
さらに注目すべきは、それぞれの心理学理論の影響が自由連想法の後に、その連想内容を元にして行われる自己洞察での解釈のみならず、自由連想法で頭に浮かんできた連想内容自体にも見られたことです。
これまで私は自由連想法という心理療法が、無意識の内容を何ら歪曲することなく純粋に意識化することのできるものであり、それゆえ自分の未知の心を探求する自己分析に非常に適した心理療法であると信じてきました。
しかし無意識の心理の表れだと思い込んでいた連想内容の多くが、実は意識的に学んだ心理学の考え方を借りた解釈のようなものに過ぎなかったことを知るにつけ、私の自由連想法に抱いていた幻想は脆くも崩れ去りました…
社会構成主義の影響
もっともこのことに意識が向いたのは、社会構成主義の理論の影響によるものと考えられます。
社会構成主義の理論では「この世のものはすべて社会的に構成(創造)されたもの」とされ、したがって心理療法で行われることに対しても、症状の真の原因の発見ではなくクライエントの人生に役立つ新たな考えの創造と捉えられています。
おそらくこのような社会構成主義の理論に触れなければ、上述のような洞察を得ることもなかったように思えます。
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