問題の要因の分析はセッションの最初に行うべき非常に重要なアセスメント項目~カウンセリングの効果を高める手法1

要約:カウンセリングの効果を高める手法その1として、『ケースの見方・考え方:精神分析的ケースフォーミュレーション』などを参考に、できるだけ早い段階でカウンセリングの手法では解決が困難な要因の有無をアセスメントする必要性を取り上げた。

今回から折に触れて、私なりに考えているカウンセリングの効果を高める手法をお伝えして行きたいと考えています。
ただ各心理療法の実用的な解説書が既に多数存在しているため、このサイトではどの心理療法を用いた場合にも役立つことが期待できるように、セラピスト-クライエント関係の事柄を中心に、基本的なことを提示して行きたいと考えています。

精神的な悩みの解決を阻む主な要因

カウンセリングとは、一般的には精神的な悩みを抱え、その解決が困難である場合に利用するサービスと考えられていると思われますが、その悩みを生み出していると想定される要因は主に次の4つに大別できると考えられます。

1. 性格因
その人の考え方の癖が主な原因と考えられるケース。

2. 身体疾患など、心理的な要因以外の個人的な要因
身体疾患を患うと、多くの場合その不快さが心理面にも大きな影響を与えます。また治療が困難であったり致死率が高い病気の場合には、極度の不安に駆られることなども生じ得ます。
また発達障害のように、脳の機能が上手く働かないことが原因で心理的な症状が生じるような精神疾患も存在します。

3. 環境因
その人を取り巻く環境に主な原因があると考えられるケースで、これには物理的な要因と人的な要因とがあり、後者の例としてはハラスメントなどがあります。

4. 関係性の要因
これは対人関係の問題において、当事者個々人の心理的特性に原因を求めることが困難なケースを指しますが、私自身は純粋に関係性の病理というものが存在するという見解には懐疑的です。
なお、問題の性質を関係性の病理と捉えて解決を目指す心理療法として家族療法があります。

問題の要因の分析はカウンセリングの最初に行うべき非常に重要なアセスメント項目

前述のような要因の分析が必要な理由は、その中にカウンセリングの手法では解決が困難な事柄が含まれているためです。
具体的には、カウンセリングの技法が得意とするのは、1の性格要因のみであるということです。

その理由は、まず2のケースでは心理的な症状は他の要因が元で生じているため、その要因が解消しない限りは根本的な解決に至らないためです。
(但しストレスコーピングなどの対処法を覚えていただき、心理的な症状をある程度緩和させることは可能です)

また3に関しても環境を変化させるためにはそれなりの権威が必要ですが、公認心理師という国家資格が制定された現在においても、医師や弁護士などと比べて社会的な信用力が遥かに劣るカウンセラーという職種に、企業その他の組織に働きかける力はほとんど望めません。

以上のように、カウンセリングの場に持ち込まれる問題の要因の中には、カウンセリングの技法では対応困難なものが含まれているため、この点のアセスメントをセッションの早い段階から行う必要があります。
なぜなら、もしこれを怠ると相談者、カウンセラー共に無駄な苦労を強いられることになってしまうためです。

またカウンセリングの適用の有無に関しては、要因のみならずカウンセラー個人の能力の限界も同時に考慮する必要があります。
これはあらゆるケースに精通し対応可能なカウンセラーなど世の中に存在しないためですが、この点はリファーという観点で教わっていることでもあるかと思います。

心理アセスメント参考文献

最後に心理アセスメントの参考書を一冊紹介致します。
ナンシー・マックウィリアムズ著『ケースの見方・考え方:精神分析的ケースフォーミュレーション』、創元社、2006年

こちらは以前に紹介した『パーソナリティ障害の診断と治療』の著者の別の著書です。
心理アセスメントの解説書は他にも存在しますが、それらの書籍の中には病院などの大規模な組織での活用を前提としたものも多く、この点で同書は私のような個人開業のカウンセラーを想定して書かれているという利点があります。

なお『ケースの見方・考え方』でも、今回取り上げたカウンセリングの手法では対応困難な2と3の要因は、第3章「変えられないものをアセスメントする」で詳しく解説されており、他の評価項目にも増して重要な事柄と位置付けられています。

補足) 今回の内容だけでは具体的な進め方が分かりづらいかも知れませんので、2ページ目にその点についての補足記事を掲載しました。

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