私説:過干渉の主な原因は親の過剰な自己愛と、過保護への過度の恐れ

これまで何度か過干渉の有害さについて書いて来ましたが、今回のその過干渉が起きる原因についての話です。
私見ですが、子どもの養育において親の過干渉的な関わりが生じる主な原因は次の2つであると考えられます。

過干渉の主な原因その1~親の自己愛的な性格

これまで自己愛講座などで度々触れて来ましたように、自己愛的な性格構造の人は他人を自分の手足のような存在、つまり何でも自分の思いどおりになって当然の存在と考える傾向がありますので、子どもの養育に対してもやはり同じように振る舞う傾向があります。
またそのことに違和感を感じないため、当然罪の意識や過干渉という認識もありません。

重症化すると共生期の状態に陥る

この親の自己愛が重症化しますと、子どもを(心理的な意味で)自分とは異なる独自の存在ではなく自分の完全な一部と考え「私はあなた」「あなたは私」とでも言えるような心理的に完全に融合した状態を子供に期待するようになります。
具体的には、いちいち言葉にしなくても自分が何を考えたり感じたりしているのかを子どもがすべて察することを期待し、また自分自身も同様にして子供のことを(文字通りの意味で)すべて理解しているとの思い込みが生じます。

このような状態は精神分析では共生期と呼ばれ、もっとも重症域である精神病水準の人間関係の特徴の一つです。
こうなると子どもはすべての独自性を奪われ、親のためのみに生きることを強いられるようになります。

子ども自身が過干渉を積極的に受け入れるようになることさえある

そして多くの子どもは、この親の期待を受け入れ自ら共生期の状態に留まり、親のニーズを自分自身のニーズと信じ込むようになります。
なぜなら共生期の水準にある親はそれがもっとも重症域であるために、ストレス耐性が非常に脆弱であることから、子どもが少しでも期待通りにならないと簡単に傷ついてしまうため、子どもはこの親を傷つけてしまう罪の意識に打ち勝てずに呑み込まれて行ってしまうためです。

こうなれば子どもの側にも違和感がなくなり、親子の完全なる共生状態が成立することになってしまい、そこから抜け出すのは容易ではありません。
なぜならそこに違和感がまったくないからです。

過干渉の主な原因その2~過保護への過度の恐れ

過干渉の主な原因の二つめは親の側の過保護への過度の恐れです。
過保護は一般的に好ましくないイメージがありますので多くの親は過保護を避けようとしますが、それが行き過ぎますと「少しでも子どもの自由にさせると我儘な性格になってしまう」との恐れに繋がり、それを避けるために子どもの自由を一切奪うような養育が行われるようになります。
しかもその動機が恐れであるため、その不安を振り払うために必死に、つまり非常に強迫的になります。
こうして元々の動機が過保護を避けるためであったとしても、結果的に過干渉と大差ない養育が行われるようになります。

両方の原因が過干渉に関与しているケースも少なくない

もっとも過干渉の原因は主にこのどちらかに大別できるというよりも、両方の原因が関与しているケースも少なくないように思えます。

例えば私の母は、私から見れば「かなり自由を制限していた」ように思えますが、母の口癖は「甘やかして我儘に育て過ぎた」というものでした。
しかもそうした台詞が母から出る時は決まって私が母の思いどおりにならなかった時でした。

あくまで私見ですが、このように過保護を過度に恐れる心理の背後には親の過剰な自己愛が潜んでいる可能性があるように思えます。

以上、簡単にですが過干渉の起きる原因について考察してみました。

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