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松本麗華さんは歴史上稀に見る凶悪犯罪者の子どもとして生まれた「原罪」を背負い続けるサバイバー

少し前に民放のいくつかのニュース番組で、麻原彰晃(本名:松本智津夫)死刑囚の三女の、アーチャリーこと松本麗華さんのインタビュー放送を見ました。
それらの番組ではインタビュー後に、スタジオのゲストや司会者から次のような厳しい指摘がありました。

被害者へ謝罪する気持ちが感じられない
父親の罪と向き合っていない
今回の手記の出版やインタビューは自分のための行為(売名行為)に過ぎない
信者に対する影響力の大きさを自覚していない

ですが私には、これらの批判はあまり的を得ていないような気がしました。それは次のような理由からです。

まず歴史上稀に見る凶悪犯罪とはいえ、罪を犯したのは父親であり彼女ではありません。
麻原死刑囚のを責めるのなら、まだ理解できます。なぜなら性格形成にもっとも大きな影響と責任を有しているのは親であるためです。
ですが後から生まれてきた子どもに、そのような影響も責任もありません。

また「信者に対する影響力の大きさ」についても、松本さんは望んで正大師の地位に就いたのではなく、恐らく勝手に祀り上げられたようなものだと思われます。
しかも当時まだ12歳ですから、そんな小さな子供を最高権力者として崇める大人たちの方が、よほど問題ではないでしょうか。

さらに売名行為との指摘も、一時的に多額の印税収入が得られたとしても、凶悪犯罪者の子どもであること知られる不利益の方が遥かに大きいはずです。

確かに松本さんの30歳という現在の年齢を考えると「父から直接真相を聞くまでは、父が犯罪を犯したとは信じられない」との発言からは、現実検討能力の未熟さを感じます。
ですがそれも松本さんの、物心ついた時からの人格形成のもっとも重要な時期をオウムの世界のみに触れてきた生い立ちを考えると、それも止むを得ないと思われます。
自分の利益のためなら殺人も厭わない人々に囲まれ、一度も健全な養育環境を経験したことのない人が、いったいどのようにして健全な心を持ち得るのでしょうか?

そのように考えますと自らの意思で教団を抜ける決意をしたことだけでも大きな心理的成長であり、私にはむしろ歴史上稀に見る凶悪犯罪者の子どもとして生まれ、原罪とも言えるような罪を背負わされた絶望的な人生を生き延びたサバイバーのようにさえ思えました。

幸いこれらの番組を見た方の多くが、松本さんに同情的なコメントを残しているのは幸いなことであると共に、意外でもありました。
凶悪犯罪者の子どもをスケープゴートにしても共感を得やすいためです。
『松本麗華』ツイートまとめ – 3月19日 – TANGO!

松本麗華著『止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記』、講談社、2018年

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