ゲシュタルト療法による自己分析・自己治療のテーマとした症状:
以前に統合失調症の幻聴を疑似体験で体験した、無秩序になり続けるアラーム音を再び聞いたことによる恐怖。不気味なアラーム音の正体は目覚まし時計ではなく全自動洗濯機のアラーム音であることが分かりました。
不快な音の正体が分かったとはいえ、以前の幻聴疑似体験の苦痛に耐え続ける恐怖がトラウマ(心的外傷)になっているのか、アラーム音が鳴るたびに恐怖を感じてしまいます。
さらに、その恐怖は食事時まで影響を与え続け、今度は極度の鼻づまり(身体症状)からの嘔吐恐怖症を引き起こしました。
そのため予定では女性恐怖症の原因と思われる体験*をゲシュタルト療法で自己分析・自己治療しようと考えていましたが、急遽予定を変更して、不快なアラーム音への恐怖や嘔吐恐怖症に苦しむ自己を支えるためにゲシュタルト療法により傾聴することにしました。
*関連ブログ:下級生の女子の「いじめ」がトラウマで女性恐怖症に-自由連想法による自己分析・治療177回
ゲシュタルト療法による自己分析・自己治療:
カウンセラーとしての自己(以下C)「こんにちは」
恐怖症状に苦しむクライエントとしての自己(以下S)「…」
C「どうしましたか?」
S「放って置いてくれ。俺はもう駄目だ」
C「何が駄目なんですか?」
S「奴だ…奴がもうすぐやってくる…そしたら終わりだ…(恐怖に怯える)」
S「あっちへ行け(手で払う仕草)」
S「うわっ、来るな、はっ、はっ(手で払い続ける)」
(その手を壁にぶつけて悲鳴を上げる)
C「大丈夫ですよ…落ち着きましょう(クライエントの体を抱えて守るような仕草)」
S(肩で大きく息をしている)
S「いつもこうなんだ…みっともないだろ?いい大人がわめき散らして、ははっ(自己卑下した笑い)」
C「何が起きたのですか?」
S「何がって…そんなこと聞いてどうするんだい? 気違いの言うことなんて聞いても仕方ないだろ?」
C「私に話すと気違いだと思われると感じていらっしゃるんですね。」
S「みんなそうだ…どいつもこいつも…人のことを馬鹿にしやがって」
C「あなたのことを気違いだと言う人がいるのですね」
S「そうだ」
C「それは酷いですね」
S「ふん…あんただって本当そう思ってるんだろ? 何企んでるんだ」
C「何か企んでいるように見えますか?」
S「あぁ、全身から詐欺師のオーラが出てるよ」
C「私は詐欺師だったのだですね、知りませんでした」
S「しらばっくれやがって」
C「おまけに嘘つきでもあるみたいですね」
S「あぁ、大嘘つきだ」
C「私は大嘘つきなんですね」
S「止めだ止めだ、こんな馬鹿話」
C「馬鹿げた話なんですね」
S「そんなに奴の話を聞きたいのか?」
C「ええ是非☆」
S「(息を整えてから)奴は物心ついた頃から俺の心の中に棲みついていやがるんだ」
C「それは恐ろしい!」
S「恐ろしい?そんな生易しいものじゃねぇよ」
C(固唾を呑む)
S「俺の胃なのかに棲みついていやがるんだ」
C「胃の中に…」
S「気に入らないことがあると内側からチクチクと刺しやがるんだ、お尻の針で」
C「お尻の針で…」
S「あぁ、蜂みたいな奴らなんだ」
C「無数の蜂みたいな奴らがあなたの胃の中に棲みついてる」
S「想像しただけでゾッとするだろ?」
C「えぇ…」
S「だから食べても食べても全部奴らに持ってかれちまうんだ」
C「持ってかれる?」
S「あぁ、奴らの巣にだよ」
C「蜂の巣?蜂の巣があるんですか?」
S「あぁ、俺の頭の中にな…」
C「頭の中に蜂の巣が…」
S「あぁ、だから脳が腐っちまったんだ…臭うだろ?」
C「どんな臭いですか?」
S「あんた鼻悪いのか?(苦笑)」
C「すみません」
S「まあいいや…そんなわけで体中が奴らのおかげでおかしくなっちまったのさ」
C「先ほど、奴がもうすぐやってくるとおっしゃってましたよね。あれはどういう意味だったのですか?」
S「援軍さ。奴らの援軍が口や耳…穴という穴から入り込んでくるのさ。信じられないだろ?」
C「たしかに信じがたい話ですね」
S「あぁ…それに奴らは賢いんだ。食べ物の中に隠れて巧みに侵入してくるんだ。」
C「それでは食事もできませんね」
S「あぁ、気持ち悪くて何も食べられないんだ」
C「もしかしたらそれが嘔吐恐怖症の原因ですか?」
S「嘔吐恐怖症?世間ではそう呼ぶらしいな。でもな、それは間違いだ。嘔吐が怖いんじゃない。奴らが侵入してくるのが怖いのさ。侵入恐怖さ」
C「たしかにそうですね。嘔吐が怖いわけじゃないのですね」
S「あぁ、でも食べなきゃ死んじまうだろ?だから奴らの侵入を防ぐのは不可能なわけさ。傑作だろ?」
C「諦めの境地なのですね」
S「諦めの境地って…」
C「すみません、言い過ぎでした」
S「いや別にいいんだ」
C「お気遣い、ありがとうございます」
S「あぁ…」
C「どうぞ続けてください」
S「あぁ…」
C「……」
S「少し落ち着いてきたみたいだ」
C「それは良かったですね」
S「あぁ…今日はこれぐらいに…頭が回らなくなってきた…奴らのせいかな…」
C「奴らが何をしているように感じられるのですか?」
S「どんどん脳みそを食べてるのさ。クソッますますおかしくなる!畜生!ぶっ殺してやる!」
C「奴らを殺してやりたいほどの、耐えきれない辛さなんですね」
S「あぁ、あんたは何でも分かるんだな、俺みたいな馬鹿と違って」
C「ご自身のことをあまり快く思っていらっしゃらないようですね」
S「あぁ、考えるだけでおかしくなりそうだよ。気が狂っちまうよ。もう半分狂っちまってるがな、へへっ(嘲笑)」
C(目を見つめる)
S「そんなに見つめるなよ、気が狂いそうだ」
C「失礼しました。私の視線があなたを苦しめてしまったようです。」
S「見世物は真っ平だ」
C「人から見られると見世物にされたような気分になるのですね」
S「あぁ、あいつらみたいにな」
C「あいつら?もしかしたら中学のときの?」
S「あぁ、あいつらだ。あいつらが俺の人生を滅茶苦茶にしちまいやがったんだ。畜生、ぶっ殺してやる!」
C「彼らが人生を滅茶苦茶に…」
S「どうなのかな?」
C「どうなんだろう?」
S「いまさら、どうでも良いことさ」
C「どうでも良い…」
S「もうどうも良いのさ…どうせ…」
C「どうせ…」
S「どうせ、もう会うこともないし…」
C「もう会うことはない…」
S「もう過去の話さ」
C「過去の話…」
S「そう、過去の話…」
C「過去の話…」
ゲシュタルト療法による自己分析・自己治療からの洞察:
感情・実感を伴わないゲシュタルト療法
今回のゲシュタルト療法はこれまでのゲシュタルト療法とは異なっていました。クライエントとしての自己の立場のときの私は、どこか「実感がないな」と思いながら話をしていました。感情を伴っていないと感じていました。
この洞察と関連した話ですが、ゲシュタルト療法を行った夜に蜜蜂のテレビ番組を見た際、予想に反して割と平気に見ることができました。もし体の中に蜂が棲んでいるとリアルに感じていればこれはあり得ないことです。蜜蜂を見た瞬間、体の中に巣食う蜂の群れを思い起こし、恐怖に駆られたはずです。
以前に玉木宏が研修医の役で出てきた夢*に、人体実験で内臓がすべて溶けてしまい骨と皮だけになってしまった患者さんが出てきました。その夢を見て以来、それまでは好物だった「骨せんべい」が気持ち悪くて食べられなくなしました。
リアルな恐怖であれば、テレビを見た際にこのような激しい情動を引き起こしたはずです。
*関連ブログ:玉木宏研修医の医療ミス@悪夢
また、これはゲシュタルト療法の最中に気づいていたことですが、蜂とは子供の頃に刺されるとは知らずに蜂を手で捕まえて非常に痛い思いをしたこと、蜂の巣が頭の中にあるのはスズメバチの巣が頭のような丸い形をしていることからの連想だと思われます。
思うに体の中に巣食っていると感じて本当に怖いと感じるのは蛆虫(うじ虫)のような気がします。
恐怖の原因はトラウマがリアルに再現されることへの恐れ
最後にゲシュタルト療法による自己分析・自己治療のテーマとした症状は、不快なアラーム音だけが原因ではないような気がします。おそらく真の原因はその直前に行った自己分析(下級生の女子の「いじめ」がトラウマで女性恐怖症に-自由連想法による自己分析・治療177回)での決断にあるように思えます。
その自己分析では女性恐怖症の原因が中学のとき体験した下級生の女子たちからの「いじめ」にあるとの結論に至り、今回のゲシュタルト療法でその下級生たちとイメージの中で対峙する予定でした。
しかしいくらイメージの中とはいえ、トラウマ(心的外傷)をリアルに再現することは激しい苦痛や恐怖を伴いかねません。またその苦痛・恐怖を予感するためなのか、ゲシュタルト療法を行うことに対して激しい抵抗を感じることもあります。実際、心理カウンセリングや夢診断・夢分析の場でもクライエントさんが抵抗を示すことが少なくありません。
おそらく不快なアラーム音は元々の恐怖を増幅したに過ぎず、その恐怖はゲシュタルト療法でトラウマを再現することへの恐怖だったのだと思われます。
抵抗はトラウマの再現を回避する健全な努力の表れ
最後に私のケースや心理カウンセリング・夢分析の場でクライエントさんが示す抵抗は、間主観的自己心理学では抵抗とは解釈しません。
間主観的自己心理学の見地では、ゲシュタルト療法による自己分析・自己治療や心理カウンセリング・夢分析に抵抗しているように見えるその態度は、あまりにも苦痛なトラウマの再現を回避し自己を守るための健全な努力の表れと解釈されます。
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