自己分析・自己治療のきっかけとなった本の文章:
自己心理学の創設者コフートの自己対象転移の定義「発達上、親や重要な他者との間では十分に得られなかった体験を補完するための治療者との絆の希求」(間主観的アプローチ臨床入門 P.139 一部改変)
本の文章からの自己分析・自己治療:
私のスーパーヴィジョンの特徴
心理カウンセラーは自己研鑽のため、スーパーヴィジョンと呼ばれる自分より経験豊富な心理カウンセラー(スーパーバイザー)の元での継続的なトレーニングを受けることが半ば常識となっています。
一般的なスーパーヴィジョンというものがどのようなものかは私には分かりませんが、私とスーパーバイザーとの間でのスーパーヴィジョンはある程度自由にさせてもらえる結果、このブログに掲載しているような自己分析・自己治療の報告に大半の時間を費やすことが慣例となっていました。
以前はこの状況に対して、これは「自己分析・自己治療の報告に大半の時間を費やすことでスーパーバイザーの介入を阻止し、スーパーバイザーからの批判による自己愛の傷つきを回避しているに違いない」と解釈していました。
スーパーバイザーへの鏡映自己対象転移
しかし冒頭の間主観的自己心理学の本の文章を目にしたとき、別の解釈が思い浮かびました。
私はスーパーバイザーに褒めてもらいたかったのかもしれません。思えば私には、親に褒めてもらったという記憶がほとんどありません(これは現実に一度も褒めてもらえなかった事実を示すわけではありません)。
私はスーパーバイザーに自己分析・自己治療の結果を(嬉々として)話し認めてもらうことで、親に褒めてもらえなかった気持ちを補完しているのかもしれません。
私のスーパーバイザーに対するような心理は、冒頭の本の記述の自己対象転移のうちの一つで、鏡映自己対象転移と呼ばれます。
鏡映自己対象転移とは、治療者あるいはスーパーバイザーに対して(親や重要な他者との関係では十分には満たされることのなかった)承認欲求を向ける心理状態を指します。
ちなみに傾聴とは、まさにこの鏡映自己対象欲求を満たすための心理療法です。
ゲシュタルト療法でも現れる鏡映自己対象転移
ゲシュタルト療法によるインナーチャイルドの癒し・自己分析・治療の際、インナーチャイルドが心理カウンセラーの立場の私に対して頻繁に鏡映自己対象転移を起こしますが、このこととスーパーバイザーへの鏡映自己対象転移とは無関係ではないように思えます。
どちらも幼少時には満たされなかった他者からの承認欲求を補完するものとして、私には治療的に作用しています。
もしスーパーバイザーが権威主義的な人物であったなら…おそらく私には幼少期のトラウマ(共感不全という心的外傷体験)の再体験になっていたことでしょう。
その意味で私はとても良いスーパーバイザーと出会えたとともに、いつも受容的・共感的に接していただけるスーパーバイザーには感謝しています。
良いスーパーバイザーに出会うために-スーパービジョン ガイド本