偽りの自己による女性恐怖症-ゲシュタルト療法によるインナーチャイルドの癒し・自己治療・治療204回からの続き。
ゲシュタルト療法によるインナーチャイルドの癒し・自己分析・自己治療:
(一時中断して翌々日ゲシュタルト療法再開。時間を置いてしまったためか、インナーチャイルドから成人の男性へと対話の相手が変化している)
男性クライエント(以下CL)「(誰も助けてくれないことについて)ああ、あんたも本当はそうなんだろ?」
心理カウンセラーとしての私(以下CO)「私もあなたのことを助けるとは思えない」
CL(とうとう正体を現したなと思いながら)「認めたな」
CO「認めた?何を?」
CL(当たり前のことを聞かれることにイライラしながら)「自分が薄情な人間だってことをだよ!」
CO「私が認めたのは、あなたがたぶん私のことをそう思っているだろう、ということについてですが…」
CL(履き捨てるように)「物は言いようだな(フンっ)」
CO「私が本心を誤魔化していると感じていらっしゃる」
CL「どいつもこいつもみんな同じだ、人のこと馬鹿にしやがって、頭に来る!」(机の足を蹴飛ばす)
CO「誰もがあなたに対して嘘ばかりつく」
CL「畜生、なめられてたまるか」
CO「嘘をつかれるのは、なめらている証拠だと」
CL「他に考えられないだろ?ふざけやがって」
(ここで心理カウンセラーは、彼の視線が終始あらぬ方向に向けられていることから、彼の怒りが直接自分に対してというよりも、空想上の相手に対して向けられおり、すぐに意識がその空想上の対象に向けられることに気づく)
CO「その方があなたのことをなめ切っていて、だから平然と嘘をつくのですね」
CL「そうなんだ、ふざけた話だろ?あんたもそう思うだろ?」
CO「酷い話ですね」
CL(興奮状態から醒め、溜飲を下げたといった様子)
CO「今はどんなお気持ちでしょうか?」
CL「いや…何だろ…分かってもらえればいいんだ、それで…」(興奮の余韻で、まだ息が荒い)
CO「分かってもらえた」
CL「ああ…」
CO(黙ってうなずく)
ゲシュタルト療法によるインナーチャイルドの癒し・自己分析・自己治療からの洞察:
クライエントの欲求への迷い
「あんたもそう思うだろ?」と同意を求められたとき、正直どう返答してよいのか迷いました。
と言いますのも、ゲシュタルト療法によるインナーチャイルドの癒し・自己分析・自己治療の直前に読んだ『間主観的アプローチ臨床入門』という自己心理学の本の内容が脳裏に浮かんだためです。
その本では、クライエントが心理カウンセラーに向ける欲求には2種類あるとされています。
一つはこれまでの人生の中で十分には満たされることのなかった欲求を心理カウンセラーに向ける自己対象欲求であり、もう一つはそのことから生じる欲求不満を解消するために「際限なく」心理カウンセラーに向けられる欲求で、その本では解毒剤と名づけられています。
そのため、もしクライエント(と言っても私なのですが)の欲求が解毒剤に当たるとしたら…ここで同意を示すと欲求がますますエスカレートしてしまうのでは?との危惧が生じ迷ってしまったのです。
しかしいくら考えてもどちらの欲求なのか分からなかったため、共感しそこなうよりはマシだと思い、同意と受け取られるような返答をしました。
他人への強い不信感
「いや…何だろ…」の部分は、クライエントの激しい戸惑いを示しているように思えます。おそらくこれまで体験したことのない相手の態度に対して、理解不能の状態に陥ってしまったのでしょう。
クライエントのこの反応から推測するに、クライエント(=私)はこれまでの人生で一度も他人に(本当の意味で)真剣に話を聞いてもらったことがないと感じ、そのことで他人への強い不信感を持っていたようです。
無意識の空想による他人への強い不信感
もっとも現実の私は他人への強い不信感を顕わにすることはありません。もっといえば不信感を感じることさえまれです。それでも自己洞察してみるとたしかに不信感は存在しています。私の場合、次のような形で他人への不信感の心理が作用します。
たとえばスーパーバイザー*から肯定的なコメントをいただいた際、その場は受け入れられても時間が経つと「スーパーバイザーは私に気を遣ってあんな『嘘』を言ってくれたに違いない」と思えてきて、肯定的なコメントを信じきれなくなることがよくあります。
このように私の他人への不信感には、相手の方にあからさまに不信感を顕わにするのではなく、空想の中で相手の言葉や態度に対して不信感を向けるという形をとることが多いという特徴があります。
またこのとき意識的に感じられるのは、肯定的な評価を信じきれない自分への自己不信感であるため、他人の言葉や態度を信じきれないという他人への不信感は無意識に抑圧されたままであることが多いのも特徴です。
*他の心理カウンセラーに対して、心理カウンセリングについての助言を与えたり、心理カウンセラーの自己成長をサポートする立場にある経験豊富な心理カウンセラー。
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