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心理カウンセラーあるいは心理カウンセリングを勉強したことのある方でしたら、傾聴の重要性についてはよくご存知のことと思います。
ところが私も含めて駆け出しの心理カウンセラーや心理カウンセリングの勉強中の方にとって、傾聴のスキルアップのためのパートナーを探すのは容易なことではありません。
しかしゲシュタルト療法の技法を使えば、パートナーなしに傾聴のスキルを磨くことができます☆

ゲシュタルト療法とは?

ゲシュタルト療法とは精神療法家のパールズが開発した、イメージによる対話を用いた心理療法です。ルールは「空想上で、あるいは椅子を使ってイメージによる対話を行う」ことのみという極めてシンプルな技法であるため、心理カウンセリングばかりでなく自己治療(セルフカウンセリング)にも簡単に取り入れることが可能な技法です。

ゲシュタルト療法による自己傾聴の方法:

このゲシュタルト療法のテクニックを使って、悩みを抱える自分自身やインナーチャイルドに傾聴(自己傾聴)することで、パートナーの助けを借りることなく傾聴のスキルを磨くことができます。
具体的には以下の手順で行います(対話内容はノートパソコンまたはノートなどに記録していった方が何かと便利です)。
1. クライエント(悩みを抱える自分自身やインナーチャイルド)の立場に身を置き、心に浮かんだことを言葉にします。
2. 次に心理カウンセラーの立場に身を移してクライエントの言葉に対して傾聴します。
3. 心理カウンセラーの応答を聴いて心に浮かんできたことを言葉化します。
4. 心理カウンセラーとして同じように傾聴します。
5. この手順をクライエントの心に変化が生じるまで繰り返します。

ゲシュタルト療法による自己傾聴のコツ:

ゲシュタルト療法による自己傾聴をより有益に行うためのコツは、クライエント役のときの態度にあります。
クライエント役のときは遠慮は一切無用です。怒りを感じたならば、その怒りをそのまま心理カウンセラー役のあなたにぶつけてください。そして心理カウンセラー役のときは、その怒りを真剣に受け止めてください。
これを繰り返すことで一般的に難事例とされる、たとえば境界性パーソナリティ障害(BPD・ボーダーライン)の方々との心理カウンセリングに必要とされる精神的なタフさが徐々に身についていくはずです。
また後述しますように、どんなに共感能力を高めてもクライエントさんの心理が(文字通りの意味で)理解できるようになることはあり得ません。傾聴でできることはせいぜい自分自身の類似していると思える心理を伝え返して、クライエントさんに是非を確かめてもらうことぐらいです*。
その点からもクライエント役で感じたことをすべて言葉化することは、類似の心理の引き出しを増やすことにつながります。
*このあたりは理論によって考え方に違いがあるようです。ロジャーズのクライエント中心療法ではクライエントさんの心理を直接感じることは実際に可能であり心理カウンセラーの当然習得すべきスキルと考えているようなふしがあるのに対して、コフートの自己心理学やジェンドリンのフォーカシング志指向心理療法では限界、つまりクライエントさんの心理を直接感じることは事実上不可能であることを認めています。

ゲシュタルト療法による自己傾聴のメリット:

ゲシュタルト療法による自己傾聴には、一般的な傾聴の練習では得ることが困難な次のようなメリットがあります。

1. ひとりで傾聴のスキルを磨くことができる

ゲシュタルト療法による自己傾聴はひとりで行うことができるため、時間や費用の制約が少なく、したがってより早く効率的に傾聴のスキルを高めることができます。

2. 共感の是非が一目瞭然

パートナーを相手に傾聴のトレーニングをした場合、相手の方は必ずしも心理カウンセラー役の共感の失敗(共感不全)をすべて指摘してくれるわけではありません。多少なりとも遠慮してしまうものですし、またすべての共感不全を傾聴の練習が終わるまで記憶できるものでもありません。
したがって傾聴による共感の是非を正確に知ることはできません。
しかしゲシュタルト療法による自己傾聴であれば共感の是非が一目瞭然です。なぜなら、あなた自身がクライエント役を務めているため、心理カウンセラー役の共感不全に、その場で直ぐに気づくことができるからです。
このことはパートナー相手の傾聴のトレーニングにも応用可能です。傾聴のトレーニングを終えた後にまとめて共感不全を指摘してもらうのではなく、共感不全を感じた瞬間にいったん止めてその場で指摘してもらうようにすれば、ゲシュタルト療法による自己傾聴と同様の効果が期待できます。

ゲシュタルト療法による自己傾聴と実際の傾聴との解離の問題:

最後にゲシュタルト療法による自己傾聴で生じる「共感の是非が一目で分かる」状態は、実際の心理カウンセリングの場での「共感の是非を直接知ることができない」状態とはかけ離れており、したがって実際の傾聴を解離しているとの危惧が生じます。
しかしこの点についても、共感の是非を直接知ることができないことで「どう改善してよいのか分からない」状態に戸惑い続けるよりは、ゲシュタルト療法による自己傾聴で共感の是非を直接確かめ改善する努力を積み重ねていった方が、クライエントさんの心理との類似点をより多く見出せるようになり、その結果傾聴のスキル(共感能力)アップにもつながるはずです。

傾聴の難しさ:

余談ですが、クライエント役の遠慮を排除してゲシュタルト療法による自己傾聴を行うと「自分で自分に共感できない」という驚くべき事実に直面させられます(T_T)
自分自身にさえ完璧に傾聴することが無理なのですから、他人であるクライエントさんへの傾聴は簡単ではありません。
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傾聴の仕方ガイド本
ゲシュタルト療法 解説本リスト
個人的には『実践・“受容的な”ゲシュタルト・セラピー―カウンセリングを学ぶ人のために』をお勧めいたします。

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