ミック・クーパー著『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』〜個々の心理療法のエビデンスだけでは不十分なことを提示

要約:ミック・クーパー著『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』は、個々の心理療法のみならず、ランバートの研究データを援用しつつセラピーの要素全体を視野に入れた、エビデンスの研究成果をまとめた画期的な本である。

今回の記事は心理職、特にエビデンスに関心があるセラピストの方に強くお勧めしたい本の紹介です。

個々の心理療法のみならずセラピーの要素全体を視野に入れたエビデンスの研究書

セラピストをはじめとした心理職に携わる皆さんは、エビデンスと聞くと認知行動療法や対人関係療法など、個々の心理療法(技法)の科学的な有効性のことを連想されると思います。
なぜなら臨床心理の世界におけるエビデンス研究の大部分は、その主な目的が保険の適用を受けるために効果の客観性を実証するためもあって、特定の心理療法の効果の検証に充てられているためです。

ところが今回紹介するミック・クーパー著『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』では、個々の心理療法のみならずセラピーの要素全体を視野に入れたエビデンスの研究成果がまとめられています。

セラピーの成功要因を推定した衝撃的な引用データ

なぜこのような研究が必要なのかと言えば、そのことを端的に示すデータが引用という形で同書の第3章に掲載されています(初版本ではP.70)。
そこには「セラピーに関わる各要因がクライアントの改善に貢献する割合の推定(Asay and Lambert, 1999より)」として、次のようなデータが示されています。

クライアント変数とセラピー外の出来事 40%
セラピーにおける人間関係 30%
期待感とプラシーボ効果 15%
技法・モデル要因 15%

個々の要因の詳しい考察は別の機会に譲るとして、注目すべきは個々の心理療法のエビデンスに関わる「技法・モデル要因」の貢献度が僅か15%しかなく、しかもこの値は「期待感とプラシーボ効果」で示されている、クライアントがセラピー対して抱く期待感と同程度であることです。

さらにその技法の貢献度よりも、ラポールと呼ばれるクライアントとセラピストとの良好な人間関係の構築の方が遥かに貢献度が高いことも示されています。

しかし最も衝撃的なのは、これらセラピーのセッションに関わる要因よりも、それとは直接関連のないクライアントの属性(モチベーションの高さやストレス耐性、レジリエンス力など)や環境の変化の貢献度が最も大きいことを示唆している点です。

以上のように、クライアントの役に立っていることが少なからず心の支えとなっているセラピストの自尊心を打ち砕くようなデータが本書には収められていますが、このデータは実証的な研究から得られたものです。

ですから例えどれほど自尊心が傷ついたとしても、この研究成果を真摯に受け止め有効活用して行くことがプロフェッショナルとしてのセラピストの務めではないでしょうか。
またそうすることでセラピーの効果を、より一層高めることが期待できるはずです。

その意味で『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』のようなセラピー全体のエビデンスの研究書は、個々の技法のエビデンスの解説書よりも有用性が高いと考えら、これが同書を強くお勧めする理由です。

『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』を活用した勉強会かセミナーを開催予定

最後に『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』の内容は、実用的かつ精読するに値する極めて優れたものと感じられますので、早ければ来月あたりから同書を活用した勉強会かセミナーのようなものを、まずは自宅のカウンセリングルームで始めてみたいと考えています。
料金もカルチャーセンターの講座などと同等か、それよりも安価に抑えたいと考えています。

また具体的な内容は、同書に示されているデータなどを元に、一つ一つ効果的な方法を探って行くものにしたいと考えています。

次のページでは著者のクーパー氏の提唱する多元的サイコセラピーの簡単な紹介と、その理念に関する私なりの見解を記述します。

紹介文献

ミック・クーパー著『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか』、岩崎学術出版社、2012年

補足)原田隆之著『心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門』も強くお勧めしたい一冊です。

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