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心理カウンセラーの中立性(中立的な態度)への洞察をもたらしたスーパービジョン体験:

スーパーバイザーとのスーパービジョンの際に傾聴vs直面化・認知行動療法-自己愛性人格障害・回避性人格障害・自己愛障害の治療に効果的な心理療法の「直面化による自己愛の傷つきへの直面化を控えた治療の事例」の内容を自己洞察として報告していたときのことです。

スーパービジョンで「あのときスーパーバイザーから一度も直面化されなかったことが自己愛の傷つきを味わっていた自分にとっては非常にありがたかった」ことを伝えますと、スーパーバイザーから「部外者には分からないことだから中立的な態度で話を聞いていた」旨のコメントをいただきました。

しかし私にはスーパーバイザーの発した中立的な態度(=中立性)という言葉がいまいち腑に落ちませんでした。なぜなら当時の私には直面化することなく話を聞いてくれる、いえ信じてくれるスーパーバイザーが完全に私に味方してくれているかのように、言葉を変えれば支持療法(支持的精神療法)的なアプローチを用いているように思えたためです。

このときのスーパーバイザーのとった中立的な態度と、それに対する私の印象とのギャップから、心理カウンセラーの中立性という概念がそれまで信じていた「科学者のように心理的な距離を保って、冷静かつ客観的にクライエントの心理を観察する態度」とは大きくかけ離れていることを知らされました。

支持療法と同様の治療効果をもたらす心理カウンセラーの中立的態度:

上述のスーバービジョンの体験は心理カウンセラーが、クライエントが直面している悩みについては当事者ではなくまったくの部外者であるために何も知らず、それゆえに中立的な態度を保つ、またその結果として直面化が差し控えられることが、クライエントにとってはあたかも自分の考えや気持ちを認めてくれる(支持してくれる)かのように感じられることを示唆しています。

さらにこのことは心理カウンセラーが意図的に支持療法(支持的精神療法)的なアプローチを用いずとも、クライエントの悩みについては無知であることを自覚することから半ば必然的に生じる中立的な治療態度を維持すれば支持療法(支持的精神療法)と同様の治療効果が期待できることをも示しているように思えます。

社会構成主義・ナラティブセラピーの「無知の態度」にも通じる心理カウンセラーの中立性(中立的な態度):

また上述の心理カウンセラーの中立性(中立的な態度)は、心理カウンセラーがクライエントの直面する悩みに関してまったくの無知であることを自覚することで生じる態度であることから、記憶の曖昧さを実感-自由連想法による夢分析・治療の「記憶や自己洞察も創造や再構成の産物の可能性」の項目で取り上げた社会構成主義やその理念が具現化された心理療法の一つであるナラティブセラピーにおける無知の態度に通じるとも考えられます。

したがって治療に効果的な中立性(中立的な態度)の実現は、心理カウンセラーが本当の意味での無知の態度が取れるか否かにかかっているように思えます。

※なお無知の態度は何も社会構成主義やナラティブセラピーの専売特許ではありません。例えば精神分析家のウィニコット・ビオン・コフートなどの治療理論にも無知の態度に通じる考え方が見られます。

現実には心理カウンセラーの忍耐から生まれる中立性(中立的な態度):

とはいえ無知の態度に通じる心理カウンセラーの中立性(中立的な態度)が実現されるためには、心理カウンセラー自身が自らの自己愛的な欲求から完全に解放されている必要があり、そのような心理状態は心理カウンセラーも人間である以上、実現不可能であると思われます。

このため実際の心理カウンセリングでは自らの自己愛的な欲求から生じる様々な考えや気持ちを自覚しつつその表出を抑え「言いたくて仕方がない」実に多くの言葉を飲み込む忍耐の時間が長くなると考えられます。
したがって実際に心理カウンセラーにできることは、できるだけ無知の態度を取れるように努力することのように思えます。

心理カウンセラーの中立性(中立的な態度)解説本
個人的には社会構成主義的な心理カウンセリングも学べる『中立性と現実―新しい精神分析理論〈2〉』がお勧めです☆

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