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自尊心を回復・高めるための賞賛・承認欲求-自由連想法による自己愛性人格(障害)の自己分析・治療での自己分析から、自己愛性人格(障害)の治療に関する次のような洞察を得ました。

自尊心を高めるための賞賛・承認欲求-自己愛性人格障害の治療 目次:

自己愛性人格障害の賞賛欲求と鏡映・理想化自己対象欲求
自尊心を傷つけられる感覚から生じる自己愛性人格障害の賞賛・承認欲求
自尊心を高めることにもっぱら関心が向けられている自己愛性人格障害
自尊心や賞賛・承認欲求に応じた共感-自己愛性人格障害・自己愛障害の治療

自己愛性人格障害の賞賛欲求と鏡映・理想化自己対象欲求

上述の自己分析ブログの冒頭での私がスーパーバイザーに対して感じた欲求不満は自己愛性人格障害の人に典型的に見られる心理で、かつ非常に強い自己対象欲求が感じられます。
直接的には「自分を賞賛して欲しい」との鏡映自己対象欲求の表れと考えられますが「いつも賞賛してくれるに違いない」と期待しているとすれば、同時に理想化自己対象欲求も生じていることになります。

自尊心を傷つけられる感覚から生じる自己愛性人格障害の賞賛・承認欲求

ただしここで注意が必要なのは、私も含めて自己愛性人格障害の人は「あらゆることで賞賛や承認されることを望んでいるわけではない」と考えられることです。
つまり自己愛性人格障害の人が望んでいるのは自分が価値を置いている(=自尊心の支えとなっている)ことに対する賞賛や承認であり、そうでないことに関しては多少批判されても自尊心が傷つくほどの痛みを感じることはないはずです。
またこのことは自尊心の支えとなっていないことで褒められてもさほど嬉しく感じられないことをも示しています。
先の私の自由連想法の例でいえば、像の絵に対して自信(上手く描けたとの自負)があったからこそ60点の評価に激しいショック(自尊心の傷つき)を受け、その傷つけられた自尊心の回復を図るために執拗な賞賛欲求が生じたものと考えられます。
そして猿の絵に関してはさほど上手く描けたとは思っていなかったため(=自尊心を感じていなかったため)100点の評価をもらってもほとんど嬉しさを感じなかったのでした。

自尊心を高めることにもっぱら関心が向けられている自己愛性人格障害

このことは自己愛性人格障害の人にとって自尊心というものがいかに重要なものであるのかを物語っているように思えます。
よく自己愛性人格障害の人の精神分析的(精神力動的)な説明として、関心がもっぱら自己(自分)に向いている心理状態、つまり自己中心性ということが言われますが、これまでの洞察を考慮しますと自己愛性人格障害の人の関心はもっぱら自尊心を高めることや傷ついた自尊心を回復することに向けられていると言えるのかもしれません。

自尊心や賞賛・承認欲求に応じた共感-自己愛性人格障害・自己愛障害の治療

以上の洞察から自己愛性人格障害およびその軽症例である自己愛障害の治療に際しては、次のようなことが言えると思われます。
たとえばコフートの自己心理学の理論による自己愛性人格障害・自己愛障害の治療では(少なくても治療関係が確立するまでは)徹底した傾聴による共感が推奨され、そのため心理カウンセラーをはじめとした治療者には大変な忍耐力が求められると考えられています。
この文脈からすれば自己愛性人格障害や自己愛障害の人はあらゆることに賞賛や承認を求める人であるかのような印象を受けますが、先の自己洞察からすればそのような欲求は自尊心に関わる内容に限ってのことだと推測されます。
したがって自己愛性人格障害や自己愛障害の人の治療で傾聴する際には、クライエントの共感的反応へのニーズに即した傾聴の仕方-新しい精神分析理論「提供モデル」でも述べましたようにクライエントさんの賞賛・承認欲求に応じた共感、具体的にはクライエントさんの賞賛あるいは承認欲求が感じられたときに伝え返し(ミラーリング)などを行うことが有効であると考えられます。
また自己愛性人格障害や自己愛障害の人の賞賛・承認欲求を半ば無視する形で闇雲に褒め称えたり同意を示すことは、むしろ非共感的な態度と映り治療の妨げになりかねません。
例を挙げます。これは私自身がスーパービジョンで体験したことです。スーパーバイザーにある自己洞察を報告したところ「いつか論文などの形で発表できると良いですね」旨の言葉をいただきました。これはある意味でスーパーバイザーから「それだけの価値がある」と認められたわけですから大変名誉なことのはずです。
しかしそのときの私の心に生じていたのは「このスーパーバイザーを何をおかしなことを言っているのだろう?」というものでした。
なぜなら論文で発表などとは夢にも思っていなかった私にとって(空想したことすらありません)スーパーバイザーの褒め言葉はまったくの見当外れで(そのような願望を抱いてなどいないことを分かっていないという意味で)非共感的な印象を受けたためです。
以上のように自己愛性人格障害および自己愛障害の人が心理カウンセラーなどの治療者に求めているのは、自らが自尊心を感じていることに対する賞賛や承認であり、そうではないことへの賞賛や承認に対しては非共感的な態度と受け取られかねません。
特に賞賛については、それがクライエントさんのニーズに側していない場合は「お世辞」として受け取られ、そのようなお世辞を言う治療者は偽善的で信用ならない人間だとして治療関係を損なう事態すら想定されます。
したがって自己愛性人格障害および自己愛障害の治療に際しては、クライエントさんが「何に自尊心を感じているのか」を敏感に感じ取ることが鍵を握っているように思えます。
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