知性化の防衛機制による精神的苦痛を伴う出来事のエピソード記憶化 目次:
自己分析のきっかけとなった本の文章
心理カウンセラーになった経緯に思いを馳せる…
精神的苦痛を伴う出来事の知性化の防衛機制による?エピソード記憶化
知性化の防衛機制が働くからこそ辛い出来事を思い出しても平気でいられる
自己分析のきっかけとなった本の文章:
『物語りとしての心理療法-ナラティブセラピーの魅力』という本を読んでいるとき、次のような内容の文章を目にしました。
「それまで苦痛に感じていた出来事が、実は人生のより大きな展開の中で(ときとしてむしろ必要なものとして)起きたエピソードであるとの見方ができるようになると、新たな人生の意味や目的が感じられるようになる」(序文 一部改変)
心理カウンセラーになった経緯に思いを馳せる…
このナラティブセラピーの本の文章から、これまでの自分の人生を思い起こしていました。
たとえば「もし嘔吐恐怖症・対人恐怖症をはじめとした様々な神経症的な精神疾患を患わなければ、たぶん心理カウンセラーになってはいなかっただろう」などと…
※おそらく大多数の心理カウンセラーの方も、精神疾患とまでは行かないまでも一度は精神的な危機を経験され、その経験が少なからず心理カウンセラーという職業の選択に影響を与えているものと思われます。
また『パーソナリティ障害の診断と治療』では他の精神分析家の言葉を引用する形で「これまでの人生で精神的な危機を一度も経験したことのない心理カウンセラーは、そのことが重大なハンディキャップになるであろう」として、精神的苦痛を伴う体験が心理カウンセラーという職業にとってはむしろ有益でさえあることが強調されています。
同様の主張として精神分析家のアリス・ミラーは『才能ある子のドラマ』の中で心理カウンセラーを志す人の大多数はアダルトチルドレン*の傾向があると述べています。
*元々はアルコール依存症の両親に育てられた人々のことを指していましたが、今日ではアルコール依存症の有無に関わらず自己愛的な両親に育てられたことが原因で、自らも自己愛の障害に悩まされることになったと考えられる人々の総称として使われることが多くなってきています。
精神的苦痛を伴う出来事の知性化の防衛機制による?エピソード記憶化:
過去の辛い出来事もそれが結果的には心理カウンセラーの仕事を選ぶきっかけとなったという点では確かに意義があったとも思います。
と同時に、そのナラティブセラピー的な意義とはまったく別のあることに気づきました。それは精神的苦痛を伴う出来事の思い出し方についてです。
そのとき思い出された過去の精神的苦痛を伴う出来事のどれもが、すべて「そういう辛い出来事があった」という出来事としての記憶(エピソード記憶)であり、そこからは当時感じていたはずの精神的苦痛をはじめとした感情的な側面がすべて抜け落ちていました。
もっといえば、意識的に当時感じた精神的苦痛を再体験しようとしても、実感することができません。
おそらくこれは知性化と呼ばれる、感情が抑圧される防衛機制が働いているためと考えられます。
知性化の防衛機制が働くからこそ辛い出来事を思い出しても平気でいられる:
もっとも考えてみれば、もし辛い出来事を思い出すたびに当時の精神的苦痛がリアルに再体験されたのでは、とても耐えられそうにありません。
したがって知性化の防衛機制が働いてくれるからこそ、当時は辛かった出来事を思い出しても平気でいられるとも言えます。
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しかしこの「知性化の防衛機制により、精神的苦痛を伴う出来事がエピソード記憶化される」現象は、心理カウンセラーにとって必須のスキルないし態度として知られる共感(的理解)について疑問を投げかけることとなりました。
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