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接近-回避型の葛藤が引き起こす女性恐怖症:

母親の不自由な思いへの共感による女性恐怖症の症状軽減?-自由連想法による自己分析・治療253回の洞察後に生じた、女性の方への安心感と恐怖心とが共存する心理状態は女性恐怖症に対する新たな洞察をもたらしました。
そのとき私の心に生じていたのは、レヴィンの葛藤理論でいえば接近-回避型に該当するような心理状態でした。この場合、女性の方に対して生じる安心感が接近欲求に、恐怖心が回避欲求に当たります。
もし私が恐怖心を回避するために女性から離れれば、それは必然的に安心感を失うことを意味します。
一方、心地よい安心感を感じ続けるために女性のそばに留まり続ければ、今度は恐怖心も同時に味わい続けなければなりません。
このように接近-回避型の心理状態では、どのような選択肢を選んでも少なからず心理的な苦痛が生じます。
これまでの女性恐怖症の自己分析では、もっぱら恐怖心という回避欲求にばかりに焦点が当てられてきました。
しかし実際には女性の方に対して接近欲求を喚起する心理も生じていたのであり、したがって接近欲求と回避欲求との間に生じる葛藤状態も女性恐怖症の症状形成に関与していたのでした。

接近-回避型の葛藤が引き起こす対人恐怖症:

この接近-回避の葛藤と女性恐怖症との関係は対人恐怖症一般にも当てはまる可能性があります。
私見では対人恐怖症は自己愛障害による自意識過剰の心理状態から発症し、中でも回避性パーソナリティ(抑うつ型の自己愛性パーソナリティ)傾向の強い方で発症リスクが高まると考えられます*。
そして回避性パーソナリティ(抑うつ型の自己愛性パーソナリティ)傾向の強い方は(無意識に抑圧されてはいますが)潜在的に自己愛性パーソナリティ的な自分を過剰に理想化する傾向を持ち合わせていると考えられます。
そのため対人恐怖症の方には人間関係において通常生じる接近欲求に加えて(無意識に)自分を理想化するような空想が接近欲求として働いている可能性があります。例えば次のような無意識的な空想です。
・自分は誰からも好かれる存在
・自分はどんな人でもたちまち魅了してしまうほど魅力的な人間
このような考えが無意識に生じていれば、他人から注目・注視されている感覚が過剰に意識されて(自意識過剰の心理状態)対人恐怖症的な症状を発症する可能性も高くなります。
もし対人恐怖症の方にこのような無意識の接近欲求が生じているのであれば、人間関係の苦痛を回避するための回避行動は、目先の恐怖心を回避することはできても、今度は「理想的な自分でありたい」欲求が満たされないことによる抑うつ状態(自分が無価値な人間のように思えてくるなど)に苛まれる可能性があります。
*関連ブログ:自己愛障害の心理(自意識過剰)を原因とした対人恐怖症の症状・原因・治療

女性恐怖症・対人恐怖症の治療への示唆:

したがいまして女性恐怖症をはじめとした対人恐怖症の治療においては、回避欲求を引き起こしている恐怖心のみならず、幻想的かつ強迫的な接近欲求を作り出す自己理想化傾向の存在の有無についても注意を払うことが有益と考えられます。
もし強迫的な自己理想化傾向が見落とされた場合は、たとえ対人恐怖症的な症状が軽減あるいは消失したとしてもそれは一時的なものに過ぎず、時が経てば自己理想化欲求の働きによる自意識過剰状態が蘇り、再び対人恐怖症を発症(再発)してしまうことになりかねないと思われます。
※『臨床におけるナルシシズム』には「(対人恐怖症を含めた)すべての精神障害はナルシシズム(自己愛)の障害から生じており、したがって自己愛の障害を放置している限り治療は未完了の状態にある」旨の指摘があります。
葛藤の心理・解決 心理学的分析本

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