自己愛障害の心理を原因とした、女性に監視・凝視される女性恐怖症的症状の克服-自己分析・治療234回の洞察から、さらに次のような女性に対する女性恐怖症的症状(女性の方の場合は男性恐怖症)への洞察が得られました。
※自己愛障害の心理に支配された方が女性の場合には、見ず知らずの男性に対して同様の心理が生じると考えられますので、男性恐怖症の症状に悩まされている女性の方は、お手数が性別を入れ替えてお読みいただけますでしょうか。
見知らぬ女性から誘惑される女性恐怖症:
上述の自己分析で洞察された自己愛障害の心理(自他の心理的境界の曖昧さから生じる相手の態度をすべて自分への反応と錯覚する心理)を持つ男性が見ず知らずの女性に(偶然)遭遇した場合、次のような意識的・無意識的な心理がその男性に生じる可能性があります。
たとえばカフェで見ず知らずの女性が「偶然隣に」座ったとします。しかし自己愛障害の方にとってこれは単なる偶然などではなく、特別に意味のある出来事として認知されます。
なぜなら(すべてを自分に対する反応と受け止める心理から)その見知らぬ女性が、何らかの意図から「あえて隣に座った」としか思えないためです。
ではそれはどのような意図でしょう? 異性の方が「他の席が空いているにもかかわらず、わざわざ隣に座った」のですから、これは「自分に特別な関心がある」もっといえば「自分に気がある」と勘違いしてしまいかねません。
こうなりますと自己愛障害の男性でなくても平常心では入られません。緊張から心臓がドキドキして手には汗が…なにしろ見ず知らずの女性がいきなり「特別な関心」や「気がある素振り」を示しているのですから…しかもその女性はすぐ隣に座っているのです。
見ず知らずの女性から好意を持たれていると感じるのは一見すると嬉しい出来事のように思えるでしょうが必ずしもそうとは限りません。
なぜなら自己愛障害の方には「自己と他者の境界が曖昧」な傾向がありますので、隣に座る女性からまじまじと凝視されているかのような恐怖や心の中を覗かれる恐怖にも苦しめられるためです。
(関連ブログ:自己愛障害の心理を原因とする、女性に本心を見透かされる視線恐怖症-自己分析・治療)
こうして自己愛障害を持つ男性は隣に見ず知らずの女性が隣に座るだけで、その女性から思わせぶりに誘惑されるかのような体験からの極度の緊張や恐怖に苛まれるという女性恐怖症的症状に悩まされることになります。
見ず知らずの女性から嫌悪される女性恐怖症:
次に同じくカフェで見ず知らずの女性が「偶然自分の隣以外の席に」座った場合はどうでしょう? この場合も見ず知らずの女性から誘惑されたと感じられた体験と同様、自己愛障害の方にとってこれは単なる偶然などではなく、特別に意味のある出来事として認知されます。
なぜなら(すべてを自分に対する反応と受け止める心理から)その見知らぬ女性が、やはり何らかの意図、今度は「あえて自分の隣の席を避けて座った」としか思えないためです。
ではその女性はなぜ隣の席を避けて座ったのでしょう? それは何らかの不快感を感じたためです。
こうして自己愛障害の男性は、見ず知らずの女性の何気ない行為から「その女性に訳も分からず嫌悪された」ことで、「自分には何か致命的な欠陥がある(あるいは狂っている)から人から嫌悪されるのではないか?」という自己愛障害に共通した無意識の信念をさらに強化していきます。
以上のような自己愛障害の男性の見知らぬ女性から誘惑・嫌悪される体験は、何もカフェに限ったことではありません。あらゆる場所で起こり得ます。
たとえば道端ですれ違った女性がたまたま笑顔であればそれは「好意の証」と受け取られ、反対に不機嫌な表情であれば「嫌悪感の表れ」といった具合にです。
このように自己愛障害の男性は、見ず知らずの女性に遭遇するたびに誘惑や嫌悪の嵐に翻弄されるため気の休まる暇もありません。
女性恐怖症による漠然とした不安と焦燥感:
また自己愛障害の人はしばしば頻繁に漠然とした不安や焦燥感に駆られることがありますが、この焦燥感には見ず知らずの女性から受ける誘惑と嫌悪の恐怖が少なからず影響していると思われます。
なぜなら通常の社会生活を営む上で私たちは実に多くの見ず知らずの人々に遭遇します。そして自己愛障害の人はそのすべての人々の対して何らかの個人的な意味を感じ取る可能性があるわけですから、その数は膨大なものになります。
これらの個人的な意味を感じ取ることによる恐怖のうち明確に意識されなかった体験が漠然とした不安や焦燥感として感じられるのではないかと考えられます。
自己愛障害の心理は無意識の心理:
なお、ここで述べた自己愛障害の心理や女性に対する幻想的な恐怖の数々は通常意識されることはありません。精神分析・心理カウンセリング・自己分析などによってはじめて明らかになる心理です。
私自身も女性恐怖症その他の対人恐怖症の自己分析を始めてからここまでの洞察に至るまでに、自由連想法を用いるようになってからは半年、それ以前の自己分析を含めれば2年以上の歳月を要しました。
また自己愛障害による見ず知らずの女性から誘惑・嫌悪されるとの幻想的な心理がエスカレートした場合は、ストーカー心理やストーカー行為へと発展してしまう可能性もあります。
関連ブログ:自己愛障害による見ず知らずの女性・男性へのストーカー心理・ストーカー行為-自己分析・治療
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