以前に夢の治癒力への疑問-夢分析において夢の治癒力への疑問について書きましたが、夢の治癒力に関連したこととして夢の問題解決能力についても疑問を感じるようになりました。
夢の問題解決能力とは?
夢の問題解決能力とは「夢にはそのときどきの問題を自ら解決する、ないしは問題解決のヒントを提示する能力が備わっている」ことを指して使われる言葉です。
夢の問題解決能力への疑問:
しかしこの夢が問題解決能力を有するという理論には次のような疑問が生じます。
夢がそのときどきの問題を自ら解決することへの疑問
睡眠に関する実験心理学の研究により今日ではどんな人でも毎晩夢を見ていることが明らかになっています。したがってもし夢に自らの力で問題を解決する能力が備わっているならば、一晩眠ることで「自動的に」問題が解決されているはずですが現実にはそんなことはありません。
夢が問題解決のヒントを提示する能力への疑問
次に夢がそのときどきで直面している問題の解決のヒントを提示しているという理論についてですが、もしそうであれば問題解決のヒントを得るためにはできるだけ早く夢分析を行う必要があることになります。
このことは見方を変えれば、時間が経ってから夢分析を起こったのでは問題解決に関してはすでに手遅れになってしまっているとも考えられますが、現実には遥か昔に見た夢の夢分析からでも問題解決に限らず様々な事柄へのヒントが得られることが多々あります。
この疑問点に関して私が教わった夢理論では「その夢を見た当時の問題が未だに未解決のまま残っており、夢分析を行うことでその(長年抱えていた)問題の解決が図られた」と説明されていました。
つまりゲシュタルト療法によるところの未完了の問題が、夢分析することによって完了(解決)されるという解釈です。
しかし私の考えでは夢分析で解決が図られた問題は「未完了の問題」というよりも性格(パーソナリティ)タイプに根ざした問題であるように思えます。
性格(パーソナリティ)という不変的な要素から生じた問題であるからこそ存在し続け、したがって夢分析を行うことでいつでもその問題に触れることができるではないかと考えられます。
この「性格(パーソナリティ)に根ざした問題」という観点から夢の、いえ夢分析の問題解決能力は次のように考えることができます。
夢の問題解決能力と性格(パーソナリティ)との関係:
夢は無意識のパーソナリティ(性格)タイプを映す鏡-夢分析や夢は自己対象・対象関係を映す鏡-ゲシュタルト療法による夢分析で触れましたように、夢は夢見手の自己対象をはじめとした対象関係(しばしば無意識の、空想的な心の中の世界)をほぼ正確に表し、その対象関係には夢見手のパーソナリティ(性格)タイプが色濃く反映されていると考えられます。
そしてこの考えによれば問題解決という観点からは、夢の内容にはパーソナリティ(性格)タイプに根ざした問題解決の仕方(癖)が表れているといえます。
このパーソナリティ(性格)タイプに根ざした問題解決の仕方は夢見手にとってあまりにも慣れ親しんだものであるため普段は意識されることさえほとんでありません。そのため夢分析によって初めて意識(客観視)されることになります(このことがあたかも新しい自分を発見しように感じさせます)。
こうして夢分析を通して自身の性格の癖(具体的には考え方の癖)を客観視することで、しばしばこれまでの考え方では問題に対処できないことを知ることとなり新たな問題解決方法を模索するプロセスが生じます。
したがって夢自体に問題解決の能力が存在したり問題解決へのヒントが隠されているわけではなく、夢分析により(これまでは盲点となっていた)性格に根ざした考え方の癖に気づくことでより柔軟な思考が可能となり、その結果様々な問題解決方法が模索されるプロセスが促進され、そのプロセスが問題解決に寄与するものと考えられます。
問題解決能力を高めるためのガイド本