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PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状への罪悪感・性格因の影響-実践的精神分析入門

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状・原因:

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、犯罪や災害・戦争・虐待などによる極度の精神的ストレスを原因として生じるとされる精神疾患で、極度の精神的ストレスを引き起こした心的外傷(トラウマ)体験が繰り返し回想(フラッシュバック)や夢(悪夢)の形で再体験されることが特徴です。
この説明から分かりますように、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはもっぱら状況因(外的要因)から生じる精神疾患であると一般的には考えられています。
またフラッシュバックや悪夢による心的外傷の再体験は、心的外傷時に生じた脳の海馬や扁桃体の器質的異常あるいは機能障害が原因と推定されています。
なお現実には、同じ極度の精神的ストレスを受けたとしてもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する人とそうでない人が存在しますが、これについてはストレス耐性(ストレスに耐えうる精神的強さ)の違いが原因と説明されることが多いようです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)におけるフラッシュバック・悪夢は心的外傷体験の純粋な再体験ではない:

しかし最近読んだオーウェン・レニックの『セラピストと患者のための実践的精神分析入門』という精神分析の本の「外傷後のストレス」の章に、上述のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する見解とは異なる認識や症例が載せられていました。
レニックはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の最も特徴的な症状であるフラッシュバックや悪夢の内容に注目し、それらで再体験される心的外傷体験には一部内容に欠落が見られる、具体的には最終的には難を逃れ助かった点が欠落していることを指摘しています。
レニックによれば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)におけるフラッシュバックや悪夢は、心的外傷体験の一連のストーリーの内の恐怖体験のみを再現し、助かったときの安堵感は一切除かれていることになります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状への罪悪感・性格因の影響:

このPTSD(心的外傷後ストレス障害)におけるフラッシュバックや悪夢の内容から安堵感が除外される原因を、レニックはクライエントの過酷な罪悪感に求め、説得力のある症例を二例提示しています。
症例では精神分析的治療によりクライエントの過酷な罪悪感(という性格因)が洞察され、その過酷な罪悪感が安堵感を感じることを阻んでいたことが明らかにされます。
そしてその自己洞察とともに心的外傷の再体験的なフラッシュバックや悪夢、すなわちPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が消失する様が描かれています。
これまで私は人格障害に限らず、ほとんどの精神疾患には多かれ少なかれ性格因(性格に根ざした要因)が症状発症の原因として関与しているとしながらも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)だけはその例外で、純粋に状況因により生じる精神疾患だと考えていました。
しかしオーウェン・レニックの『セラピストと患者のための実践的精神分析入門』における「外傷後のストレス」の章の考察から、かつてライヒが『性格分析』で述べたように、すべての精神疾患には性格構造が原因として関与しており、PTSD(心的外傷後ストレス障害)もその例外ではないとの考えに至りました。
PTSD治療ガイドラインほか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療・症状・診断 心理学的解説本

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