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自己感の曖昧さから生じる鏡映自己対象欲求が引き起こす自己愛障害の対人恐怖症的症状 目次:

自己感の曖昧さから生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状
自己感の曖昧さから生じる自己愛障害の鏡映自己対象欲求
鏡映自己対象欲求から生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状
鏡映自己対象としての取り入れ機制から生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状

自己感の曖昧さから生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状:

以前の対人恐怖症に関するブログ(自己愛障害の心理(自意識過剰)を原因とした対人恐怖症の症状・原因・治療)で対人恐怖症の原因は「自分と他人との心理的境界の曖昧さを特徴とする自己愛障害から生じる自意識過剰」と述べました。
しかしその後の自己分析や対人恐怖症・自己愛障害の方との心理カウンセリングの経験から、自意識過剰とはまた別の対人恐怖症的な症状の原因となる心理の洞察が得られました。
それは自己愛性パーソナリティ障害・回避性パーソナリティ障害・自己愛障害の原因は自己不信感・自己感の曖昧さで考察された自己感の曖昧さから生じる自己不信感です。

自己感の曖昧さから生じる自己愛障害の鏡映自己対象欲求:

私の考察によれば自己愛障害の方は「自分と他人との心理的境界の曖昧さ」とともに、自己感(「自分らしさ」や「これが自分」という感覚)の曖昧さをも同時に併せ持っていると思われます。
なお自己感の曖昧さは自己心理学の理論によれば重要な他者(もっとも重要なのは母親)からの度重なる共感不全*の結果生じたものと考えられています。
そしてこの自己感の曖昧さは、自分自身の考えや感じ方に「確信が持てない」「信用できない」といった感覚(自己不信感)を生じさせるため、自己愛障害の方は判断のよりどころ(何が自分にとって正しいのか)を自分とは別の存在に求めざるを得なくなります。
また、このように他人の判断のよりどころとして機能する人は自己心理学の用語で自己対象(今回のケースでは鏡映自己対象)と呼ばれ、相手を鏡映自己対象として利用する人の行為は、相手を自己愛の延長(物)として扱うと表現されます。
*母親をはじめとした重要な他者による共感不全は、無視・無関心・非難・的外れな共感・タイミングの悪さなど様々な要因から生じる可能性があります。

鏡映自己対象欲求から生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状:

この鏡映自己対象の機能を果たすものの一つとして他人の反応があります。つまり他人の反応をよりどころとして、曖昧で当てにならない自分自身の考えや感じ方を補うわけです。
ところが相手の反応がいつも判断のよりどころとして正しく機能してくれれば(自己愛障害の方にとっては)問題はないのですが…現実は必ずしもそうとは限らず、いえむしろ当てが外れることの方が遥かに多いと思われます。
なぜなら人は通常ほとんどの行為を「自分のため」に行うものであり、他人のために行うものではないと考えられるためです。またこの傾向は直接的な利害関係のない見ず知らずの他人に対してはさらに顕著となることが予想されます。
(通常、人は見ず知らずの他人に対して、その人に対する自分の影響(たとえば迷惑)を「最優先に」考えたりはしないものでしょう)
このように周囲の人が必ずしも鏡映自己対象の機能を果たしてくれるものではないという現実が、自己愛障害の人に激しい混乱や深い傷つき心的外傷体験)をもたらし、その結果生じる恐怖心が対人恐怖症的な様々な症状(私の例でいえば視線恐怖症女性恐怖症嘔吐恐怖症失禁恐怖症的な症状)を発症させるのではないかと考えられます。
また対人恐怖症の症状の多くが、親しい人物よりも見ず知らずの他人(視線恐怖症・女性恐怖症・男性恐怖症などがその典型)に対して生じることも、過剰な鏡映自己対象欲求*が自己愛障害(特に回避性パーソナリティ障害など抑うつ傾向の強い自己愛障害)の方の対人恐怖症的症状の一因であることを示唆しているように思えます。
*ここで「過剰な」としているのは、鏡映自己対象欲求とは本来どのような人の心にも多かれ少なかれ存在し、問題はその強さ、つまりあまりに判断のよりどころを他人に依存し過ぎてしまっているところに病理があると考えられるためです。

鏡映自己対象としての取り入れ機制から生じる自己愛障害の対人恐怖症的症状:

最後に今回の考察を前回のブログで述べた「自分と他人との心理的境界の曖昧さを特徴とする自己愛障害から生じる自意識過剰」と比較しますと、自意識過剰による対人恐怖症が自他の心理的境界の曖昧さから生じる他人からの侵入的な恐怖であるのに対して、鏡映自己対象欲求により生じる対人恐怖症は他人を鏡映自己対象として取り入れた結果生じる恐怖といえます。
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