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対人恐怖症の症状
対人恐怖症の種類
自己愛障害の心理(自意識過剰)を原因とした対人恐怖症
自己愛障害を原因とした対人恐怖症の治療
認知行動療法による自己愛障害・対人恐怖症の治療
認知行動療法による自己愛障害・対人恐怖症の治療が効果的な場合
森田療法による対人恐怖症の治療

対人恐怖症の症状:

対人恐怖症とは恐怖症の一つで、人間関係における不安や恐怖などの症状が社会生活を営む上で障害となるほど強い精神障害を指します。
※DSM-4の診断基準では社会不安障害が対人恐怖症に当たると思われます。

対人恐怖症の種類:

対人恐怖症は不安や恐怖を感じる対象や状況により、以下のような様々な恐怖症が存在することが知られています。

あがり症

自己紹介や会議での発言など、人前に出ると極度の緊張してしまう恐怖症です。

赤面症(赤面恐怖症)

赤面恐怖症も「あがり症」と同様の状況で生じる恐怖症ですが、極度の緊張に加えて「自分が赤面している様子が他人から変に思われるのではないか」との不安や恐怖も強いため特にこのように呼ばれます。

電話恐怖症・メール恐怖症

電話やメールの相手に対して、あるいは「自分が上手く応対できない不安」に対して恐怖を感じる恐怖症です。電話やメールの場合相手の表情が見えないため、相手の反応がよく分からないことが恐怖心を強めています。

視線恐怖症

一般的には他人の視線に恐怖を感じる恐怖症(他者視線恐怖症)を指しますが、自分自身の視線に対する恐怖症(自己視線恐怖症・脇見視線恐怖症)も存在します。
関連ブログ:視線恐怖症の自己分析・治療

男性恐怖症・女性恐怖症

文字通り、異性に対する極度の緊張や不安・恐怖を症状とする恐怖症です。
関連ブログ:女性恐怖症の自己分析・治療

恋愛恐怖症

その名の通り、恋愛をすることに恐怖を感じる恐怖症です。恋愛恐怖症は恋愛行為に対する恐怖だけでなく、恋愛感情を抱くだけでも恐怖に駆られる場合もあります。

会食恐怖症

嘔吐恐怖症(食事の時間になると吐き気がして食事ができなくなる恐怖症)が他人との会食時に限って生じる場合を会食恐怖症と呼びます。

体臭恐怖症(自己臭恐怖症)

「自分の体臭が他人に不快感を与えるのではないか」との強迫観念に悩まされる恐怖症です。体臭恐怖の強迫観念はいくら体を洗っても消えないことが多く、そのため体臭恐怖症は体を洗い続ける強迫行為(強迫性障害)を併発することも少なくありません。

多汗症(多汗恐怖症)

体臭が「汗によるもの」との強迫観念の場合は、特に多汗恐怖症と呼ばれることがあります。

醜形恐怖症

自分の容姿が醜いことで他人に不快感を与えたり嫌われたするのでは?との強迫観念に苛まれる恐怖症です。そのため整形手術を繰り返す場合もあります。

雑談恐怖症

雑談(世間話)への極度の苦手意識から生じる恐怖症です。極度の苦手意識から「雑談が上手くできないことで相手から変に思われるのではないか」との不安が生じます。

おなら恐怖症

他人の前で「おなら」をして不快感を与えてしまうことを極度に恐れる恐怖症です。
それぞれの対人恐怖症には「自分が他人からどう思われるか」についての極度の心配、いわゆる自意識過剰という共通点が見られます。
この自意識過剰の心理は次に述べます自己愛障害から生じていると考えられます。

自己愛障害の心理(自意識過剰)を原因とした対人恐怖症:

対人恐怖症の自意識過剰は自己愛障害の表れ

対人恐怖症に共通して見られる自意識過剰の心理は、自己愛(ナルシシズム)の基本的な特徴でもあります。
一般的な自己愛のイメージは「自惚れ」「自己中心的」などでしょうが、自己愛の本来の定義は「関心がもっぱら自分に対して向けられている」すなわち自意識過剰です。したがって対人恐怖症と自己愛とは密接な関連があります。
この自己愛の心理があまりに強すぎると、人間関係のあらゆることが自分と関係しているような錯覚に陥る、言葉を変えれば相手の態度がすべて自分への反応であるかのような思い込みが生じます。
これが(自己愛が生活に支障をきたしているという意味で)自己愛障害と呼ばれる状態です。
もし相手の態度がすべて自分への反応であるなら、それは他人事ではありません!
これが対人恐怖症で生じる「自分が他人からどう思われるか」心配で仕方がない不安状態の背後で働いている無意識の心理です。

対人恐怖症が不特定多数の人に生じる理由

また自己愛障害は人間関係全般(人と接するあらゆる場面)に影響しますので、赤の他人の態度さえもが自分への反応のように思えてします。これが知人のみならず不特定多数の人に対して対人恐怖症を発症する理由です。
なお自己愛障害の自意識過剰は重症化すれば、テレビの中の人の言動までもが「自分への反応」のように、つまり自分に語りかけていると錯覚する、統合失調症の妄想状態へと至ります。
※通常、自己愛障害の心理状態は意識されることが少なく、心理カウンセリング自己分析を通してはじめて明らかとなります。

自己愛障害の心理を原因とした対人恐怖症の治療:

(自己分析によれば)対人恐怖症の症状には自己愛障害の心理を原因として生じている以上、治療は対人恐怖症の各症状よりも自己愛障害の治療を中心に行われることになります。
自己愛障害の治療は自己心理学の見地に立てば、精神分析家や心理カウンセラーなどになる徹底した傾聴*に尽きます。
子供の頃を含めてこれまでの人生で十分には得られなかった重要な他者から存在を認められたり承認される体験を、治療の場で傾聴されることを通して体験し直すことで自己や他者への基本的信頼感を育む*。そして自己や他者への基本的信頼感が十分に得られれば慢性的な恐怖心が減り、自己愛障害(結果として対人恐怖症)の症状も軽減されるというのが、自己心理学による自己愛障害の治療の作用機序です。
※個人的には無意識的な自己愛障害の心理状態をリアルな感情を伴った上で実感すること(自己受容)が決定的に重要だと考えています。
関連ブログ:自己愛障害の心理による脇見視線恐怖症の症状・原因・治療の「私自身の自己愛障害・脇見視線恐怖症の自己治療」

*自己や他者への基本的信頼感の欠如が社会に対する慢性的な恐怖感を生じされ、その恐怖感から他人の自分への評価に過敏となり、自意識過剰の心理が形成・強化されると考えられます。
ただ自己愛障害の治療は大変根気の要る作業で、重症の自己愛障害(自己愛性パーソナリティ障害および回避性パーソナリティ障害)の場合、社会生活に大きな支障がなくなるまで回復するには、週1回以上の心理カウンセリングで最低でも2~3年はかかると言われています。
*相手の言葉の重要なキーワードや感情を伝え返すことで、自尊心や自己肯定感を高めることを目的とする心理療法。

認知行動療法による自己愛障害・対人恐怖症の治療:

最近は治療料金や治療期間などの負担軽減の事情からか、ブリーフセラピー(短期精神療法)なかでも認知行動療法が注目されています。
認知行動療法とは精神障害の方の症状の原因となっている無意識の信念(認知行動療法では自動思考と呼ばれます)を発見し、その信念を害のない考え方へと変える(同じくリフレーミングと呼ばれます)ことで症状の軽減を図る心理療法です。
対人恐怖症に限らず、うつ病不安障害の治療などにも盛んに使われています。
しかし私が対人恐怖症や不安障害などに試した限りでは「短期的に」認知行動療法を用いた場合に得られるのは無意識の信念(自動思考)への知的な洞察に過ぎなく、リフレーミングによる症状の軽減も一時的なものに限られ、症状の形成に関係した強いストレスに晒されるとすぐにまた恐怖症状は悪化してしまいました。
もっともこれは認知行動療法に問題があるのではなく、どのような心理療法をもってしても短期的に自己受容を促すような感情を伴った自己洞察を得るのは困難であることを示しています。
そもそも簡単に自己受容できるような信念であれば最初から無理に抑圧することもなく、したがって対人恐怖症をはじめとした精神障害の症状を発症しなくても済んだはずです。

認知行動療法による自己愛障害・対人恐怖症の治療が効果的な場合:

私見では次のような場合に認知行動療法は、傾聴のみの心理カウンセリングや自由連想法を用いた精神分析的治療などよりも対人恐怖症に対して効果的な治療が望めると思われます。
私たち(特に心理カウンセリングに馴染みのない方)は一般的に、質問に答えることには慣れていても「ご自由にお話ください」と言われると何をどう話していいのか分からず戸惑ってしまいがちです。
そのため傾聴や自由連想法ではしばしば沈黙が訪れ、それでも技法に忠実な心理カウンセラーや精神分析家は黙ったままのことが多いため、患者さん(クライエント)には大変な苦痛となります。
特に対人恐怖症の方は多くの場合目の前の(自由連想法の場合は見えない位置にいる)治療者に対しても恐怖や不安を感じていらっしゃるため、沈黙が訪れても黙って待っているだけで助け舟を出してくれない状態は拷問に等しい体験です(@_@;)
これでは治療が新たな対人恐怖の体験となってしまいます(T_T)
この点、認知行動療法では心理カウンセラーが質問などにより障害となっている自動思考の探索を積極的にサポートしてくれますので、上述のような不要な沈黙による対人恐怖体験を回避できます。
さらに認知行動療法は精神科の治療に取り入れる病院が増えているため、保険診療で治療が受けられるというメリットもあります。

森田療法による対人恐怖症の治療:

また森田療法も対人恐怖症の背後に働く自己愛障害の心理(自意識過剰)を直接探索するわけではありませんが、症状に対して「感じるものは仕方がない」と思うことで自己受容を促すため、対人恐怖症の症状軽減に効果が期待できます。
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