夢の内容:
パソコンメンテナンスの仕事。急きょ初めての現場に一人で行くように指示される。元請けの社長の罠?で重大なミスを犯し責められる。指示どおりに作業したのに…
後片付けを済ませ外へ出ると靴を盗まれていしまい、仕方なく余っていたサイズの合わない汚らしい靴を履く…
「その靴、○○さん(私)のじゃないですよね」
「ええ、盗まれてしまったので」
雨の中、近くに停めてあった自転車を取りに行くと…自転車も盗まれている
「○○さん、仕方ないですよ」
自由連想法による夢分析の内容(重要な連想のみ):
わざとミスを誘発するような仕方で指示された
その後も、いちいち嫌なことを思い出させる
嬉々とした彼の表情が思い浮かぶようだ
自己愛性人格障害らしい態度だ
「何を話していいのか分からない」「共通の話題がない」と困っているらしい
父親の「息子たちが何を考えているのか分からない」
母親の「当たり前でしょ!」
二人とも自己愛性人格障害だと想定していた
共にコミュニケーションを取ろうと努力している
努力の後
つまり彼等は他人を蔑むために馬鹿にするのではない
コミュニケーションの取り方に自己愛的な尊大な態度が出てしまうだけ
気持ちの上では「関係を持ちたい」と願っている
以前にメールカウンセリングで出会った自己愛の強いクライエントさん
盛んに「関わる」「関わってやる」と言っていた
本当は人一倍、深い孤独感を感じているのではないか?
自由連想法による夢分析からの洞察:
自己愛性人格障害・自己愛障害の方の深い孤独感
これまで自己愛性人格障害と診断された方や自己愛に障害を持つ方が深い孤独感に苛まれているとは考えもしませんでした。自己愛性人格障害の方の「人を寄せつけない、あからさまに尊大な態度」が、とても孤独を恐れているようには見えなかったからです。
そのため父親が「息子たちが何を考えているのか分からない」と同僚に話していたと知っても、「意外な一面」つまり例外的なことで済ましていました。
しかし今回の自己分析で、父親と同じように自己愛に問題を持つと思っていた方の同様の嘆きを思い出したことで、「意外な一面」で済まされていたことが、自己愛性人格障害・自己愛障害など自己愛に問題を抱える方々にある程度共通した心理である可能性が洞察されました。
自己愛性人格障害や自己愛障害の方々が話しかけてくるとき、それがどんなに尊大で人を小馬鹿にしているように見えても、それは(多くの自己愛に関する心理学的研究が示すように)些細なことでも自分の惨めさに耐えられないことから生じているのであり、決して敵意からではないのでしょう。
私にはむしろ「もっと親しくなりたい」との好意の表れのように思えます。
おそらく自己愛性人格障害や自己愛の障害に苦しむ方々は、ご自身のコミュニケーション方法が上手く機能しないことに、苛立ちや絶望を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
また自己愛性人格障害や自己愛障害の方々感じる深い孤独感には(表面的な尊大な態度から)相手に理解されないことへの悲しみも含まれているようにも思えます。
自己愛性人格障害・自己愛障害の方の深い孤独感・悲しみを癒す傾聴(ミラーリング)
自己愛性人格障害の治療に関して多くの治療家は限界設定を推奨していますが、精神分析的治療の入門書『パーソナリティ障害の診断と治療』では徹底したミラーリング(傾聴)が必要だとしています。
今回の自己分析からの自己愛に関する洞察に照らせば、私も『パーソナリティ障害の診断と治療』での見解と同様に、自己愛性人格障害や自己愛障害の方々に有効な治療法は傾聴による徹底したミラーリングであるように思えます。
なぜなら自己愛性人格障害や自己愛障害の方々が「相手に理解されないことからくる深い孤独感や悲しみ」に苦しんでおられるのなら、クライエントさんの気持ちに添って理解しようと試みる傾聴は、自己愛性人格障害や自己愛障害の方々の苦しみを癒す治療法としてとても理にかなっているように思えるからです。
P.S. 私自身も「自他の境界のあいまいさ」という自己愛障害を持つ人間であり、この障害の影響で日々孤独感や悲しみを感じることも少なくありません。それにもかかわらず同じような障害を抱える方の孤独感や悲しみに気づかなかったことが不思議に思えます。
それだけ他者理解は難しいということなのかもしれません。
自己愛性人格障害 治療ガイド