DSM-IVの自己愛性パーソナリティ障害の診断基準は他人の印象:
『DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引』における自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ障害)の鑑別診断のための項目は全部で9つありますが、その多くは他人へ迷惑や被害を与えるような行為で占められています。
しかしこれらの診断項目は自己愛性パーソナリティ障害の尊大で傲慢な態度は、自由を奪われることを防ぐための抵抗-自己分析でも述べましたとおり、治療者をはじめとした周囲の人から見た自己愛性パーソナリティ障害の方の印象であり、自己愛性パーソナリティ障害の方が診断項目にあるような心理を実際に持っているとは必ずしも言えないように思えます。
自己愛性パーソナリティ障害の方がDSM-Ⅳの診断基準を見ることの害:
さらにDSM-IVの自己愛性パーソナリティ障害の診断基準が「他人へ迷惑や被害を与えるような行為」で占められていることは、周囲の方に自己愛性パーソナリティ障害の方への嫌悪感や恐怖心を助長することにもなりかねませんし、また自己愛性パーソナリティ障害の方へも「自分は極悪非道な性格で、社会に害を与える迷惑な存在」などとの信念を生じさせ、不要な罪悪感で苦しませてしまう恐れがあります。
自己愛性パーソナリティ障害の方の自殺を助長しかねないDSM-Ⅳの診断基準:
自己愛性パーソナリティ障害と診断された方がしばしば心理カウンセリングで(ご本人の考えによれば)残虐な性格や悪行の数々を語り最後に「懺悔します」と締めくくる、あるいは「こんなに酷い人間はもう死ぬしかない」と自殺念慮を口にされるのには、少なからずDSM-IVの自己愛性パーソナリティ障害の診断基準に代表される自己愛性パーソナリティ障害への否定的な理解が影響しているような気がしてなりません。
自己愛性パーソナリティ障害の症状は親の自己愛などの結果:
私の考えでは自己愛性パーソナリティ障害をはじめとした自己愛障害の症状は、自己愛の強い親などから繰り返し自己愛の延長物(親の願望を満たすための道具)*として扱われた影響から、自分の自由や権利に対して(これ以上奪われてたまるかと)過敏になっていることが一因と思われます。
したがって自己愛性パーソナリティ障害の方は、他人へ迷惑や被害を与えるような行為を少なくても「意図的に行っているわけではない」と考えられます。
*関連ブログ:抑うつ的な自己愛性パーソナリティ障害の理解@才能ある子のドラマ/アリス・ミラー
自己愛性パーソナリティ障害 治療・診断ガイド