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ドラマ「ラブソング」考察1~心理療法家の心の闇をリアルに描いた作品

日中に心理カウンセリングの部屋のFBページに次のような投稿をしました。

昨日から始まったこちらのドラマで、福山雅治さんが臨床心理士を演じています。
正直、実際の臨床心理士像とはあまりにかけ離れており、クライエントとの接し方も、破天荒と言えるほどセオリーから外れています。
しかしそれでも、このドラマの臨床心理士像は、心理療法とは「人と人とが真剣に関わる場」であり、それこそが本質であることを思い起こされてくれます。

こちらは昨晩から始まった福山雅治さん演じる臨床心理士と、藤原さくらさん演じるクライエントが主役のドラマ「ラブソング」に関する感想です。
今回はこの感想の中の「臨床心理士像」にまつわる部分について詳述します。

なお臨床心理士とは資格の名称であり、臨床心理士の方に特有のパーソナリティ傾向があるわけではないと思いますので、今回の内容は心理療法家一般についてのものです。

心理療法家は表向きはストイックなほどに生真面目な方が多い

まず「実際の臨床心理士像とはあまりにかけ離れている」ことについてですが、臨床心理士の知人にはストイックなほどに生真面目な方が多くそのイメージが強いため、福山雅治さん演じる臨床心理士のように、プライベートで昔のトレンディードラマの登場人物のように夜な夜な遊び歩き、家族(水野美紀さん演じる、同じく臨床心理士で言語聴覚士でもある義理の妹)にべったり甘えているような人はまずいないだろうと思え、それで実態とかけ離れている旨のことを書きました。

心理療法家は人格者ではない

しかし私の知る知人の顔は、誰もがそうであるように、しょせん他人に対して示される偽りの顔に過ぎず、実際のところは深い闇の部分を有している方も少ないないと予想しています。
その根拠は次のようなものです。

・アリス・ミラー著『才能ある子のドラマ』の中の、心理療法家を志す人の9割は(今日で言うところの)アダルトチルドレンとの記述
・精神分析家のJ. グリーンバーグの「人生で大きな挫折を経験したことのない心理療法家は、心理職に携わる者として重大なハンディキャップを負っている」旨の発言
・特に日本では、心理職はワーキング・プアの代表格であり、それゆえ健全な精神を有する人が好んで志望する職種ではない(それでも、どうしてもなりたい人だけが就く仕事)

一般的な心理療法家のイメージは、心の専門家として完成された人格を有した人というようなイメージかもしれませんが決してそうではなく、むしろそうでない部分を持ち合わせていないと務まらない仕事ということです。
その理由は至って単純で、辛い経験をしたことのない人に他人の心の痛みを(何となく想像はできても)実感することなどできないためです。
ですから困難な人生であればあるほど適しているという、何とも皮肉な職種なのです。

この点、福山さん演じる臨床心理士は、最初はただの遊び人のように思えましたが、やがてその派手で甘えん坊な行動の背後に、パートナーとの死別のショックから未だ立ち直っていないことが明らかとなります。
このように「ラブソング」は、一般的に理想視されがちな心理療法家の心の闇の部分をリアルに描いている珍しいドラマと感じました。

性格改善の限界をよく知っているのが心理療法家

もっとも、この話を聞いて「そんな状態の人に心理療法の仕事が務まるのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが既に述べましたように元々健全とは言い難い心の持ち主ですし、かつストレスを何かですぐに発散するのではなく、それにしっかりと向き合うことを好む傾向も有していますので、いつも充実感を味わっている訳ではなく、むしろ様々な不全感を抱えつつ生活しています(少なくても私は)。

この点に関して、ある精神分析の本に「同じように不完全な心の持ち主同士が協力して問題解決に当たるのが心理療法である」旨のことが書かれていました。
心理療法家も相談者の方と何も変わるところがないと言っているのです。そしてこの言葉は「教育分析」と呼ばれる、自身が1000時間以上にわたり心理療法を受けた経験を持つ精神分析家の言葉であることに留意していただければと思います*。
つまりどんなに努力しても性格の改善には限界がある、そのことを身をもって実感しているのが心理療法家と言えます。

*ちなみに私は精神分析家ではありませんので、そのようなトレーニングは受けていませんが、自己分析という形で自由連想法を用いて350時間ほど自分の心を探求しました。
その時の洞察は次のサイトに掲載しています↓
自己愛性パーソナリティの心理カウンセラーの自己分析

ですから(次回のこのテーマで詳しく述べますが)その自分の至らない部分をしっかりと自覚し、それを心理療法に上手に活用することがプロの技であると私は考えています。

ドラマ「ラブソング」公式サイト

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