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もしも明日世界が滅ぶとしたら何をしたいか?~自分が何をしたいのか分からない人に最も適した心理学的ワーク

前回、人生の可能性を広げるワークとして「もしも明日世界が滅ぶとしたら何をしたいか?」という心理学的なワークを紹介しました。
今回はこのワークの詳しい解説です。

最初のうちは表層的な考えしか浮かんで来ない

前回の記事では、実施に当たって「腑に落ちる、あるいはハッとさせられたり意外な答えが出て来るまで繰り返す」ことをお勧めしましたが、この種のワークでは通常このような反復は行いません。
それでもこのようにした方が良いと思ったのは、私自身で試してみた結果からの判断です。

一番最初にこの問いについて考えて出て来た答えは「多分いつもと変わらない生活を送るだろう」というものでした。
しかしその後すぐに「いや、どうせ明日死んでしまうのなら、これまで経験したことのないことがしたい」と思い直しました。
すると今度も間髪入れず「イタリアに行って古代や中世の遺跡をこの目で見てみたい」という考えが思い浮かびました。

この考えは私にとって意外なものでした。なぜならイタリア語はもちろんのこと英語もまったく話せない私には、海外旅行をしてもそのことで著しく不便な思いをするため楽しめないだろうと思っていたためです。
ですからこの願望が私の本当にしたいことだったのかと思いました。

しかしその確信も一瞬だけでした。すぐに今ちょうど『美術の歴史』という西洋美術史の本で、中世のイタリア美術のところを読んでいたことに気づいたのです。

恐らくこの2つめの願望も、ここ最近の日常生活の影響を大きく受けたものであり、したがって数日後に同じ作業を行えば、まったく違った願望が思い浮かぶ可能性が高いように思えました。

これでは心に浮かんできた願望が本当にやりたかったこととは、とても言えません。
ですから、できるだけ本心に触れるためには普段とは異なる意識状態に移行する必要があるように思え、それで前回の記事のように、心の底から納得できる状態に至るまで繰り返し同じ問いに対して考え続けることを提案しました。

人間には手っ取り早く答えを見つけてスッキリしたいという願望がある

またこの種のワークを行う時は私の例のように、人間には手っ取り早く答えを見つけてスッキリしたい悩みから開放されたいとの願望があるため、思い浮かんだ考えがその強い影響を受けてバラ色の人生を約束するかのような幻想をもたらしますので、この点でも注意が必要です。

繰り返し同じ問いについて考え続ける行為は、自由連想法に近い効果をもたらす

前回は触れませんでしたが、実はこの繰り返しの行為は精神分析の創始者であるフロイトが神経症の治療に用いた自由連想法に近いことを行っているように思えます。

自由連想法とは心に思い浮かんだことを包み隠さず精神分析家に話すものですが、最初のうちは普段から考えているようなことしか思い浮かんできません。
しかしそれを辛抱強く数十分間続けていると、やがて突然、本当に自分がこんなことを考えていたのかと疑いたくなるような思考が浮かんでくることがあり、私自身も何度も経験しています。
このようなことは同じことを繰り返すことで普段は強く働いている理性が徐々に力を失い、より素の自分*へと近づくことで生じるのではないかと私は考えています。

*ただしフロイトは無意識の意識化と考えていました。

なおここでの理性とは社会の影響を強く受けて形成されるものと考えられますので、この変化はロジャーズ派の理論で言えば自己不一致の状態から自己一致の状態へ、ウィニコットの概念で言えば偽りの自己から本当の自己への変化と言えるものです。

この自由連想法に対して冒頭の本当にやりたいことを見つけるワークは意図的にそれについて考え続けるものですから、その点では自由連想法と大きく異なります。
しかしそれでも、ひたすらその思考を繰り返すという行為が、結果的には自由連想法と同じく素の自分へと心を促すことにつながります。

このワークの効果が最も期待できるのは、自分が何をしたいのか分からず苦しんでいる人

最後にこのワークの効果が最も期待できるのは、自分が何をしたいのか分からず苦しんでいる人ではないかと考えられます。
なぜなら、すでにそれが分かっている人ではワークに臨むモチベーションが足りず、実行しても心理ゲームの域を出なくなってしまう恐れがあるためです。

それに対して自分が何をしたいのか分からず、それゆえ人生が無意味に感じられ生きていくこと自体が辛く感じられる人にとっては、人生の目標を見つけれられることこそが救いとなるはずだからです。

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