これまでの自己愛講座では、自己対象欲求と呼ばれる自己愛的な欲求のネガティブな側面について触れることが多かったように思えますので、今回はポジティブな側面を紹介させていただきます。
理想化自己対象(欲求)のポジティブな側面がとても分かりやすく表現されているナイキのCM作品
少し前に写真家のFBページで、カンヌライオンズ2015でゴールドを受賞したナイキのCM作品を紹介したことがあります。
https://www.facebook.com/photographer.kenji.tajiri/posts/1072255992794625
CMについて簡単に説明致しますと、子どもの頃からタイガー・ウッズに憧れ、自分も将来タイガー・ウッズような一流のゴルファーになりたいと願い毎日懸命に練習し続け、やがて成人してからその憧れのタイガー・ウッズと一緒にコースを回るという、アメリカンドリームを体現したような内容のCMです。
もちろん、たとえどんなに努力し続けたとしても、残念ながらタイガー・ウッズのようなスター選手になれるのは、ほんの一握りの選手だけですでの、このCMは多分に夢物語です。
ですがこのCMは理想化自己対象欲求のポジティブな側面がとても分かりやすく表現されています。
現実以上に理想視するからこそ、その憧れの気持ちが「将来の夢」を生じさせる
これは自己心理学の中でも一般的な考えではないようですので、あくまで私見ですが(漠然としたものではなく)明確な将来の夢が生まれるためには、その対象がその子にとって憧れの気持ちを生じさせるほど非常に魅力的なものでなければならないはずです。
そしてそこまで魅力的と思えるためには、多分にその対象が理想化されている、つまり現実以上に素敵に見える必要もあるはずです。
なぜなら、もし最初からその対象の長所短所を冷静沈着に分析できてしまうと、どんな優れた人やものにも必ず欠点は見つかるため、憧れの気持ちなど生じようがないためです。
例えば私は現在、本業のカウンセリングと夢分析の仕事の傍ら、3年前から写真家として芸術的な活動も行っていますが、芸術家になることは子どもの頃からの夢でもありました。
そしてその将来の夢は、親戚にジャンルは異なりますが画家という芸術家の方がいたことだけでなく、その方を父親以上に慕っていた、つまりそれほどまでに理想視していたために生じたのでした。
親戚には他にも東京の大きな病院の要職にある医師や、上場会社の役員、市議会の議員の方などもいて、特に医師の方は家族や親戚の間でも非常に評価の高かった方です。
それでも他ならぬ芸術家への夢が生じたのは、画家の親戚をもっとも高く理想視していたためと考えられます。
憧れの気持ちだけでは、将来の夢を実現するモチベーションは生まれない
もっとも私の場合、その子どもの頃の夢をその後も抱き続け、その夢に向かって努力し続けたわけではなく、途中には長い長いブランクがありました。
この私の人生を鑑みますと、将来の夢が生じても冒頭のCMに登場した男の子のような経路をたどるためには別の要因が必要なことが分かります。
次回のこのテーマの記事では、その将来の夢を実現するモチベーションを生み出す別の要因について書かせていただきます。