ディー・C・レイ編著『セラピストのための子どもの発達ガイドブック:0歳から12歳まで 年齢別の理解と心理的アプローチ』の紹介記事。
1ページめでは、同書には12歳までの各年齢ごとの特徴や有効な介入方法がコンパクトにまとめられている点と、しかしそれらの介入方法については詳しく書かれていないため、別途参考文献にあたる必要があることを述べました。
続くこのページでは、それ以外にも読書の際に少し注意が必要と思われる点を取り上げます。
実年齢の章を見ても参考にならないことがある
『セラピストのための子どもの発達ガイドブック』には、各年齢ごとの特徴や有効な介入方法が書かれているため、知りたい子どもの実年齢の章に目を通せば、素早くその子の発達に関する特徴を知ることができるように思えます。
このため私自身も当初そのようなリファレンス的な使い方をしましたが、実際は該当年齢の特徴を読んでも腑に落ちないことがけっこうありました。
発達のペースには個人差がある
このように理論と現実との間に乖離が生じてしまうのは、同書にも書かれているように「発達段階の順序はかなり正確に予測することはできるが、そのペースを予測することはできない」、つまり発達のペースにはかなりの個人差があるためと考えられます。
したがって対応に苦慮する子どもの心理的な手がかりを何とか得ようと、同書の実年齢の章に頼ってみたものの、必ずしも参考になるとは限らないという現実は、見方を変えれば発達のペースが平均値からかなり離れた子どもだったがゆえに、対応に苦慮する結果となったと言えるのかもしれません。
なぜなら子どもと接しているときの私の心の中には、たとえ無自覚であったとしても「これくらいの年齢の子どもは、このような感じに違いない」というような、これまでの経験から培われた何らかの印象が形成されていたはずだからです。
年齢別の章は必ず「0-2歳」から読み進める
以上の私の実体験からも、同書の年齢別の章に目を通す際には、必ず0-2歳の章から読み進め、発達全体の流れを把握することが非常に大切ではないかと考えられます。
これはこのような読み方をすることで、今自分が接している子どもと類似した特徴が書かれているページを素早く探し出すことができるとともに、そうして探り当てた該当ページから、その子の発達のペースをある程度でも推測することが可能になると考えられるためです。
紹介文献
ディー・C・レイ編著、小川裕美子、湯野貴子監訳『セラピストのための子どもの発達ガイドブック:0歳から12歳まで 年齢別の理解と心理的アプローチ』、誠信書房、2021年
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