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基本的信頼感と病態水準との関係

エリク・H・エリクソンのライフサイクル論

エリク・H・エリクソンは今日でもよく使われる「ライフサイクル」「アイデンティティ」などの概念を生み出したアメリカの発達心理学者かつ精神分析家です。

エ リクソンのライフサイクル論では年齢に応じた発達課題が設けられ、その課題の達成に失敗すると、その発達段階への「固着」が起こるためその先の発達段階へ と進めなくなり、この固着がそれぞれの発達段階に特徴的な病理を生み出し、またその固着が生じる段階が早期であればあるほど重症の病理を引き起こすと考え られています。
ちなみにこの固着という概念は、精神分析的な発達論によくみられる仮説です。

基本的信頼感の課題

このエリクソンのライフサイクル論の発達課題の一番最初は「基本的信頼感」の獲得ですが、これは具体的には自分や社会への信頼感を指します。
しかしここでの信頼感とは「あの人はどうも信頼(信用)できない」などと思うときの信頼感とは大きく異なり、もっと根源的なレベルの話で、具体的には自分や世界がこの世に存在していることに確信が持てるか否かという話です。

基本的信頼感の欠如が精神病水準の病理を生み出す(仮説)

ですから、もしこの基本的信頼感が得られないと、自分が本当に生きているのかさえハッキリしない世界に日々直面することになり、それは生きた心地のしない恐怖に違いありません。
そしてこの恐怖の世界に日々直面しているのが、統合失調症をはじめとした精神病水準に位置する方々だと考えられています。
このように、これらの方々を苦しめているのは幻覚だけではありません。

一方パーソナリティ障害水準や神経症水準に位置する方々は、この基本的信頼感の獲得には成功しているため、他の症状に悩まされることはあっても自分の存在をめぐる恐怖に襲われることはないと考えられています。

誕生に関わる罪悪感がもたらす発達への深刻な悪影響(仮説)

少 し前にFBページやTumblrで、今晩放送されるNNNドキュメント「マザーズ 特別養子縁組と真実告知」の紹介の最後に、子供が罪悪感を抱きかねない ような出生に関わる事実を告知することは「この世に生きていること」自体への罪の意識をもたらし、それはエリク・エリクソンのライフサイクル論の一番最初 の発達課題である「基本的信頼感」の獲得に、非常に深刻な悪影響をもたらす旨のことを書いたのは、今回の内容を念頭に置いてのことです。

この世に生まれて日々生きていること自体が許されないことだとしたら、生存に関わる基本的信頼感など育ちようがありません。
ですから出生にまつわる事実に関わらず、例えばうっかり「お前など生まなければ良かった」などと口走ることが、どれほど子供の心を深く気づけてしまうことかについても、お分かりいただけると思います。

ただしこれらのことには「レジリエンス」と呼ばれるストレスに耐える力の有無によって結果が大きく違ってきますので、今晩の放送内容がどのような展開となるのか注目しています。

NNNドキュメントHP

参考文献

E.H.エリクソン著『アイデンティティとライフサイクル』

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