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空虚感から意識を逸らすために常に何かしていないと落ち着かない~自己愛講座26

要約:自己愛性パーソナリティの人が、中核的な恐れと想定されている空虚感とどのように関わることが多いのか、同じく空虚感に苛まれることの多い境界性パーソナリティ障害の人と対比する形で紹介しています。

昨日、写真家のHPの記事で自己愛的な性格傾向の人の特徴について少し触れましたので、その特徴についてもう少し詳しく書きます。

自己愛的な人は辛い空虚感から意識を逸らすために常に何かしていないと落ち着かない

前述のリンク先にも書きましたように自己愛的な人は「自分は無価値な存在」という中核的な恐れを抱えていると想定されていますが、この恐れは専門的には空虚感と呼ばれる感覚から生じると考えられています。

空虚感とは文字どおり、心の中が空っぽで何もかもが虚しく感じられる感覚のことで、この感覚は非常に辛いものであるため直接自覚されることは滅多になく、通常はその前駆症状として理由もなくイライラしたり落ち着かなくなります。
この前駆症状は強い不安を伴うほどのものではありませんが、前駆症状であるためにそのまま放置しておけばより深刻な空虚感へと進展しかねないため、それを防ぐために何でも良いから何かしたい欲求に駆られるのではないかと考えられます。

こうして何でも良いから何かすることで、空っぽだった心が埋まり一時的にせよ空虚感から脱することができるため、これが自己愛的な人が常に何かし続ける衝動に駆られる要因ではないかと考えられます。

イライラして落ち着かない理由はよく分からないことが多い

またこのイライラして落ち着かない症状は、その理由が分からないことがほとんどです。
これはこの症状が空虚感という別のより深刻な症状を防ぐための二次的な症状であるためで、逆にもし理由が定かであればそれは空虚感を感じてしまっていることになり、それは次に述べる境界性パーソナリティ障害のような大変深刻な状態となってしまいます。
ですからそれ自体は不快なことかもしれませんが、理由が分からないことが守りになっているのです。

空虚感はより重症な境界性パーソナリティ障害の中核的な症状でもある

また空虚感は境界性パーソナリティ障害の中核的な症状とも考えられています。

※境界性パーソナリティ障害は境界性人格障害、ボーダーライン、ボーダー、BPDとも言われます。

境界性パーソナリティ障害はDSMなどの診断基準では自己愛性パーソナリティ障害とは別のパーソナリティ障害に区分されていますように、一般的には別の性格と考えられているようですが、私はより重症域の障害、つまり自己愛性パーソナリティ障害がさらに悪化した状態と考えています。

その理由は境界性パーソナリティ障害と診断された相談者の方に例外なく、これまで自己愛講座で書いてきたような特徴が見られること、およびそれらの説明をすると相談者の方が腑に落ちることが多いこと、さらにその特徴である症状が非常に激しいものであることなどからです。

このため自己愛性パーソナリティ障害の診断がつく程度の自己愛障害の人まででは、心の防衛機能がそれなりに機能しているために深刻な空虚感が直接知覚されることは滅多にないのに対して、より重症で防衛機能が損なわれてしまっている境界性パーソナリティ障害の人では、その深刻な空虚感を頻繁に感じてしまうのではないかと考えらえます。

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