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病態水準の違いによる、陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の変化

これまでたびたび病態水準について触れてきましたが、分かりにくい概念かもしれませんので、それぞれの病態水準の違いが分かりやすい症状を例に、それぞれの違いについて解説致します。
今回取り上げる例は他人からの陰口や噂話です。

誰でも一度は、実際は違っていても、目の前の人々が自分のことを噂していたり陰口を言っているように思える経験をしたことがあると思いますが、その光景をどのように知覚し解釈するかは病態水準によって大きく異なります。

病態水準の違いによる陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の変化

健全な人の陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴

まず健全な人の、陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴です。
ちなみにここでの健全な人とは、いろいろと悩みはあってもそのストレスに耐えることができるため、ときどき誰かに相談に乗ってもらうことはあっても、医療やカウンセリングなどの専門サービスを利用する必要はない人のことを指します。

健全な人でも、ときどき目の前でヒソヒソ話を目撃すると「もしかしたら自分のことを言っているのでは?」と思い不安を感じることがあります。
しかし具体的に心当たりがなければ「気のせいだったのか」と思い直すため、やがて忘れ去られて行きます。

この例のように健全な人は後述の神経症水準の人とは異なり解釈を変化させることができる、つまり柔軟な思考ができるためストレスが溜まりづらく、それが概ね快適な生活を送ることを可能とする一因となっていると考えられます。

神経症水準の人の陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴

続いて神経症水準の人の、陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴です。

神経症水準の人の場合「もしかしたら自分のことを言っているのでは?」と思い不安を感じるところまでは健全な人と同じですが、その後が違ってきます。
神経症水準の人の場合「気のせい」だと思っても「でもしかしたら」という疑念が繰り返し生じてくるため、その不安に恒常的に悩まされることになります。

ただ後述のパーソナリティ障害水準や統合失調症水準の人とは異なり、その不安が思い過ごしであることには気づいており、しかしそれでも疑念を拭い去れず常に葛藤状態に置かれるため、非常に苦しい思いをします。
ですから自分の抱える悩みが誤った解釈から生じていることに気づいている点で、より重症域の人と判別され、またその悩みが医療やカウンセリングなどの専門サービスの力を借りないと解決困難である点で健全な人と判別されることになります。

「自分でもおかしい(気にし過ぎ)と思うが、それでも気になって仕方がない」というのがこの水準にある人の典型的な口癖です。

パーソナリティ障害水準の人の陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴

続いてパーソナリティ障害水準の人の、陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴です。

パーソナリティ障害水準の人の場合、神経症水準の人とは異なり、目の前の人々が自分のことを快く思っていないと確信しています。
しかし後述の統合失調症水準の人とは異なり、実際に陰口が聞こえてくるわけではありません。
そのため「ハッキリ言わなくても、そう思っているのは分かっている」というのがこの水準にある人の典型的な口癖です。

このようにパーソナリティ障害水準の人は、様々なことに対して裏を読み被害感情に駆られるので、人間関係に大きな支障を来しがちです。

統合失調症水準の人の陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴

最後に統合失調症水準の人の、陰口や噂話の知覚や解釈の仕方の特徴です。

もっとも重症域の統合失調症水準の際立った特徴は幻覚が生じることです。
今回の例で言えば、目の前の人々が実際に自分の悪口を言っていることがハッキリと聞こえてきます。
この点が繰り返しになりますが、聞こえはしないがそう思っているに違いないと思い込むパーソナリティ障害水準の人との決定的な違いです。

この両者の違いは専門的には現実検討能力の有無として説明されます。
パーソナリティ障害水準の人は現実を正確に知覚しているにも関わらずそれを歪めて解釈してしまうのに対して、統合失調症水準の人は知覚そのものが歪められてしまっていると考えられています。
そしてこの知覚の歪みが幻覚や幻聴などの幻覚に該当します。

以上、簡単にですが、陰口や噂話を例に「健全」と「神経症水準」「パーソナリティ障害水準」「統合失調症水準」という3つの病態水準の違いについてまとめてみました。

病態水準 参考文献

ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』、創元社、2005年

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